慶應義塾大学 薬学部の化学対策

本記事は慶應義塾大学薬学部の化学対策について記載しています。
薬学部の化学の試験時間は100分で、配点は150点です。
目標得点率は70%以上に設定して勉強していきましょう。
薬学部の入試情報
| 年度 | 学科 | 募集人員 | 志願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 倍率 | 合格最低点 |
| 2026 | 薬学科 | 100 | 1,113 | 1,028 | 333 | 3.1 | 179/350(51.1%) |
| 薬科学科 | 50 | 830 | 768 | 291 | 2.6 | 195/350(55.7%) | |
| 2025 | 薬学科 | 100 | 1,172 | 1,073 | 327 | 3.3 | 189/350(54.0%) |
| 薬科学科 | 50 | 900 | 835 | 262 | 3.2 | 199/350(56.9%) | |
| 2024 | 薬学科 | 100 | 1,372 | 1,252 | 317 | 3.9 | 161/350(46.0%) |
| 薬科学科 | 50 | 869 | 815 | 290 | 2.8 | 167/350(47.7%) | |
| 2023 | 薬学科 | 100 | 1,454 | 1,314 | 306 | 4.3 | 169/350(48.2%) |
| 薬科学科 | 50 | 854 | 824 | 295 | 2.8 | 171/350(48.8%) | |
| 2022 | 薬学科 | 100 | 1,421 | 1,292 | 333 | 3.9 | 204/350(58.2%) |
| 薬科学科 | 50 | 782 | 726 | 272 | 2.7 | 209/350(59.7%) | |
| 2021 | 薬学科 | 100 | 1,203 | 1,105 | 295 | 3.7 | 196/350(56.0%) |
| 薬科学科 | 50 | 737 | 683 | 219 | 3.1 | 195/350(55.7%) |
各項目の傾向と対策
大問は全部で5つです。
大問ごとの問題と構成は下の表を参照してください。
| 2026年度 | |
| 1 | ・無機化学、結晶格子 設問×8 |
| 2 | ・状態変化、状態図、溶液 設問×10 |
| 3 | ・反応速度、化学平衡 設問×8 |
| 4 | ・有機化学の構造決定 設問×4 |
| 5 | ・高分子、アミノ酸、核酸 設問×5 |
| 2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | |
| 1 | ・ケイ素とその化合物、シリカゲル、結合エネルギー、気体の法則 設問×8 | ・アルミニウムとその化合物、溶解塩電解によるアルミニウムの製造 設問×9 | ・銅の化合物、電解精錬、ダニエル電池 設問×9 |
| 2 | ・コロイド、浸透圧、油脂とセッケン 設問×7 | ・反応速度、速度定数 設問×7 | ・混合気体、蒸気圧、溶液の蒸気圧降下 設問×6 |
| 3 | ・鉛蓄電池、水溶液の電気分解、燃料電池 設問×7 | ・反応熱、緩衝液、連鎖反応 設問×8 | ・窒素酸化物、化学平衡 設問×9 |
| 4 | ・芳香族化合物の構造決定 設問×5 | ・有機化合物の構造決定、アミノ酸 設問×6 | ・芳香族化合物の構造決定 設問×5 |
| 5 | ・糖類(炭水化物)、核酸 設問×8 | ・リン脂質、核酸、タンパク質 設問×10 | ・合成高分子化合物、アミノ酸、陽イオン交換樹脂によるアミノ酸の分離 設問×7 |
マーク式の数値問題だけでなく、物質名、反応式、構造式、短い理由説明など、さまざまな解答形式が混在しています。
そのため、単に知識量が多ければよいわけではありません。
問題文を読みながら、必要な知識を選び、計算し、指定された形式で正確に答える処理能力が求められます。
また、高校教科書では詳しく扱わない実験法や化学物質が登場することもあります。
ただし、発展的な内容が登場したからといって、大学レベルの化学をすべて事前に学ぶ必要があるわけではありません。
問題文中に与えられた情報を、高校化学の基本原理と結びつけて考えることが重要です。
●対策
最重要分野① 無機化学・材料化学・工業化学
2024~2026年度の問題で、特に安定して重視されているのが無機化学です。
2024年度には、アルミニウムの製錬、溶融塩電解、テルミット反応、両性、不動態などが出題されました。
2025年度には、ケイ素、二酸化ケイ素、石英ガラス、シリカゲル、ケイ酸塩などが扱われています。
2026年度には、金属結晶、単位格子、配位数、結晶密度、遷移元素、沈殿、錯イオンなどが出題されました。
この3年間だけを見ても、無機化学と物質の構造は毎年大きな割合を占めています。
そのため、生体関連物質だけに重点を置き、無機化学を暗記分野として軽く済ませるのは危険です。
無機化学で必要な学習
無機化学では、単に元素や化合物の性質を覚えるだけでは不十分です。
次の内容を関連づけて整理する必要があります。
- 元素の周期表上の位置
- 電子配置と価電子
- 酸化数
- 酸化還元反応
- イオン化傾向
- 酸・塩基との反応
- 沈殿の生成と溶解
- 錯イオンの形成
- 工業的製法
- 物質の用途
例えばアルミニウムについては、両性金属であることだけでなく、なぜ水溶液の電気分解では単体を得られないのか、なぜ溶融塩電解を行うのかまで説明できる必要があります。
遷移元素では、イオンの色、沈殿の色、酸化数、錯イオンを個別に暗記するのではなく、試薬を加えたときに何が起こるかを一連の反応として整理しましょう。
金属結晶と物質の構造
2026年度では、体心立方格子や面心立方格子について、単位格子中の原子数、配位数、原子半径、密度などが問われました。
この分野では、公式を丸暗記するよりも、単位格子の図を自分で描き、原子がどの位置にどの割合で含まれるかを数えられることが重要です。
重点的に確認したいのは、次の内容です。
- 体心立方格子
- 面心立方格子
- 六方最密構造
- 単位格子中の原子数
- 配位数
- 原子半径と格子定数
- 結晶の密度
- 金属結合
- 展性・延性
金属が展性や延性を示す理由についても、金属原子の層がずれても自由電子による結合が保たれることを、短く説明できるようにしておきましょう。
最重要分野② 理論化学と多段階計算
慶應薬学部では、理論化学の計算問題も重要です。
単純な公式代入ではなく、実験データや反応式をもとに、複数段階の計算を行う問題が多く見られます。
典型的には、次のような流れになります。
測定値を読み取る
→ 物質量に変換する
→ 反応式の比を使う
→ 求める質量・濃度・表面積などへ変換する
この変換の連鎖を正確に進める必要があります。
電気分解
2024年度では、アルミニウムの製錬に関連して、溶融塩電解とファラデーの法則が扱われました。
電気分解では、次の流れを確実に身につけることが重要です。
- 電気量を求める
- 電子の物質量に変換する
- 電極反応式を書く
- 電子と生成物の物質量比を使う
- 質量や体積を求める
陰極反応と陽極反応を混同しないことに加えて、電極自体が反応に関与する場合にも注意が必要です。
また、電気分解では、生成物だけでなく、電極の消耗量や副生成物の割合まで問われる可能性があります。
結合エネルギーとエンタルピー
2025年度には、二酸化ケイ素の生成エンタルピーなどを利用して、Si–O結合の平均結合エネルギーを求める問題が出題されています。
このタイプでは、
- どの結合を切るか
- どの結合を作るか
- 単体を原子化するためのエネルギー
- 反応全体のエンタルピー変化
を区別する必要があります。
符号を暗記するのではなく、
「反応物をすべて原子にするために必要なエネルギー」
と
「原子から生成物を作るときに放出されるエネルギー」
を分けて考えると、式を立てやすくなります。
実験データと表面化学
慶應薬学部では、実際の測定法を題材にした問題が出題されます。
2025年度のシリカゲルでは、窒素吸着法を利用して、物質の比表面積を求める考え方が扱われました。
このような測定法の名称自体を事前に覚えていなくても、問題文には、
- 何を吸着させるか
- どの量を測定するか
- 分子がどのように並ぶか
- その結果から何を計算するか
が説明されています。
重要なのは、初めて見る測定法を恐れず、問題文の情報を図や式に置き換えることです。
最重要分野③ 有機化学と構造決定
慶應薬学部では、有機化学の知識を物質の性質、実験結果、反応式と結びつけて問う問題が多く見られます。
単に反応名や生成物を暗記するだけでなく、構造式を読み、官能基の変化を追跡する能力が必要です。
重点的に学習したいのは次の内容です。
- 炭化水素
- アルコール・フェノール
- アルデヒド・ケトン
- カルボン酸
- エステル
- アミン
- アミド
- 芳香族化合物
- 異性体
- 酸化・還元
- 加水分解
- 縮合反応
反応前後で、どの原子や官能基が変化したかを確認する習慣をつけましょう。
実験問題の読み方
長文実験問題では、問題文を最初から最後まで読むだけでは、条件を整理しにくいことがあります。
読みながら、余白に簡単な反応の流れを書くと効果的です。
例えば、
出発物質
→ 試薬Aを加える
→ 沈殿が生成
→ ろ過
→ 加熱
→ 生成物を定量
という形で整理します。
各段階について、
- 何が加えられたか
- 何が反応したか
- 何が残ったか
- 何を測定したか
を書き込むと、計算や考察がしやすくなります。
理由記述の特徴
慶應薬学部では、15~50字程度の短い理由説明が出題されます。
例としては、
- アルミニウムを水溶液の電気分解で得られない理由
- 金属が展性・延性を示す理由
- シリカゲルの乾燥能力が低下する理由
- ある物質が安定である理由
などがあります。
長い論述ではありませんが、字数が短いため、必要な要素だけを正確に書かなければなりません。
記述答案の作り方
理由説明では、基本的に、
原因
→ 仕組み
→ 結果
の順に書くとまとまりやすくなります。
例えば金属の延性についてなら、
「原子の層がずれても、自由電子による金属結合が保たれるため」
というように、原因と結果を一文でつなぎます。
記述練習では、教科書の文章をそのまま覚えるのではなく、次の三点を確認しましょう。
- 主語が明確か
- 原因と結果がつながっているか
- 問われていない情報を書きすぎていないか
数値マーク形式への対応
慶應薬学部では、計算結果を一つの数値として書くのではなく、仮数、小数点、指数、符号を別々にマークする形式が使われます。
計算が合っていても、形式への変換を間違えると失点します。
計算後には、次の順序で確認しましょう。
- 単位をそろえる
- 科学的記数法に直す
- 有効数字を確認する
- 指数の正負を確認する
- 各解答欄との対応を確認する
普段の演習でも、最終的な数字だけでなく、指定形式へ変換するところまで行うことが大切です。
計算精度を上げる方法
途中式をすべて長く書く必要はありませんが、少なくとも次の内容は残しておきましょう。
- 使用した反応式
- 物質量比
- 単位変換
- 求める量
- 10の指数
特に、
- mLとL
- gとkg
- cmとm
- PaとkPa
- 分と秒
などの単位変換に注意が必要です。
過去問演習で記録したいこと
過去問を解いた後は、点数だけを記録するのでは不十分です。
失点原因を次のように分類すると、復習の優先順位が明確になります。
- 知識不足
- 問題文の読み違い
- 反応式の誤り
- 構造式の誤り
- 計算式の立て方
- 単位変換
- 桁・指数
- 記述不足
- 時間不足
例えば、知らない実験法が出て解けなかった場合でも、実際には問題文を正確に読めば解けたのか、特定の高校化学知識が不足していたのかを区別する必要があります。
優先すべき学習分野
慶應薬学部化学の対策では、次の順序が現実的です。
最優先
- 理論化学の計算
- 無機化学
- 工業的製法
- 結晶と物質の構造
- 有機化学の反応
- 構造決定
- アミノ酸・ペプチド
- 長文実験の読解
次に重要
- 糖類
- 核酸
- 高分子
- 酸・塩基平衡
- 電気化学
- 反応速度
- コロイド・表面化学
- 短文理由説明
発展対策
- 等電点と電気泳動
- ケルダール法などの定量実験
- 気体吸着と比表面積
- 酵素反応
- 環状ペプチド
- 初見の分析方法
慶應薬学部対策で避けたい勉強法
薬学部だからという理由で、生化学や大学レベルの専門知識ばかりを先取りするのは効率的ではありません。
発展的な題材が出題されても、その多くは問題文で必要な説明が与えられます。
それよりも、
- 反応式を正確に書けない
- 酸化還元が曖昧
- 無機化学の色や沈殿を覚えていない
- 単位格子を計算できない
- 官能基を見分けられない
- 物質量計算が遅い
といった高校化学の穴の方が、大きな失点につながります。
まず全範囲の標準事項を完成させ、その上で薬学的題材への応用力を高めることが重要です。
まとめ
慶應義塾大学薬学部の化学は、生体関連物質だけを深く学べば対応できる試験ではありません。
2024~2026年度では、アルミニウム、ケイ素・シリカ、金属結晶・遷移元素など、無機化学・材料化学・工業化学が継続して大きく出題されています。
一方で、アミノ酸、ペプチド、糖類、核酸など、薬学部らしい生体関連有機化学も重要です。
さらに、初見の実験法、データ処理、多段階計算、構造式、反応式、短い理由説明など、多様な能力が求められます。
この試験の本質は、大学レベルの知識を大量に暗記することではありません。
発展的な題材を正確に読み、高校化学の基本原理へ翻訳して処理することです。
そのためには、化学全範囲の標準知識を穴なく固めたうえで、長文実験、構造追跡、計算、短文記述を組み合わせた演習を重ねる必要があります。
生化学だけに偏らず、無機・理論・有機・高分子をバランスよく学び、初見の題材にも対応できる総合力を作ることが、慶應薬学部化学の最も有効な対策です。
早慶上理対策のまとめはこちら!↓

