東京大学(前期日程)の地学対策

本記事では東京大学(前期日程)の地学対策について記載しています。
試験時間は理科2科目で150分で、配点は2科目で120点です。
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各項目の傾向と対策
東京大学の地学は、教科書の用語を覚えただけでは解けません。2017年度から2026年度までの10年分を見ると、毎年のように初見の観測設定、グラフ、模式図、実験結果が提示され、そこから物理量を計算したり、現象の仕組みを短く説明したりする問題が出ています。
一方で、出題の大枠はかなり安定しています。近年は第1問が宇宙、第2問が大気・海洋、第3問が固体地球・地質という構成です。題材は最新の観測や研究を思わせるものでも、解答に必要なのは高校地学の基本法則です。つまり東大地学の本質は、「既知の公式を覚えているか」ではなく、「未知の状況を既知の原理に翻訳できるか」にあります。
まず知っておきたい試験の基本構造
東京大学の理科は、物理・化学・生物・地学から届け出た2科目を150分で解きます。地学だけに公式の制限時間はないため、もう一科目との時間配分が重要です。地学は大問3題が基本で、各大問はさらに二つ程度の問いに分かれます。
解答形式は多彩です。
- 用語・数値を答える記述問題
- 計算過程を示す計算問題
- 現象の理由や図の意味を説明する論述問題
- 選択問題、空欄補充
- グラフ、模式図、ベクトルなどの作図問題
計算問題では有効数字が指定されることが多く、途中式も要求されます。論述問題では「1行程度」「2行程度」など短い解答が中心です。難しい現象を長く語るのではなく、鍵となる原理を明示し、因果関係を簡潔に示す必要があります。
また、問題文が長く、そこで新しい定義や式が与えられることがあります。未習事項に見えても、設問文を正確に読めば解ける場合が多いため、文章を数式や図へ変換する読解力も得点力の一部です。
10年分から見る年度別の代表題材
各年度には複数の小テーマがあります。ここでは、対策上重要な代表題材を三分野に整理します。
| 年度 | 第1問・宇宙分野 | 第2問・大気海洋分野 | 第3問・固体地球・地質分野 |
|---|---|---|---|
| 2017 | 恒星・銀河、宇宙の距離や進化 | 大気の鉛直構造、放射・循環 | プレート運動、地質年代、岩石 |
| 2018 | 恒星の性質、太陽活動と観測 | 大気の安定度、気象現象 | 地層・地質構造、日本列島の地質 |
| 2019 | 天体の運動と観測量 | 大気循環、天気図・海洋との関係 | 地球内部、鉱物と相平衡 |
| 2020 | 恒星・宇宙の物理量 | 放射、気温、大気・海洋の変化 | 岩石・鉱物、地球内部の物性 |
| 2021 | 日食などの天体配置、太陽系小天体 | 大気の安定と海洋循環 | 地質年代、地層・火成活動 |
| 2022 | 恒星・太陽系、軌道と観測 | 風・波・プレートに関わる流体現象 | 地震、日本列島の地質構造 |
| 2023 | 連星、恒星進化、超新星 | モンスーン、雲、潮汐、黒潮 | 重力、アイソスタシー、火山・マグマ |
| 2024 | 星団とHR図、太陽 | 大気・海洋の熱力学と循環 | 地震波、地質図と地下構造 |
| 2025 | 銀河系の回転、視線速度、恒星 | 気圧配置、偏西風、熱帯低気圧 | プレートテクトニクス、海嶺、火山 |
| 2026 | 銀河の赤方偏移、超新星、距離測定 | 雲と大気大循環、暖水渦 | 地震波、地殻・マントル、岩石物性 |
この一覧から、単元そのものは繰り返されていることが分かります。恒星の明るさ・温度・距離、天体の軌道、大気の安定度と循環、海流、地震波、アイソスタシー、プレート運動、岩石・鉱物は特に重要です。ただし同じ公式をそのまま当てはめる問題は少なく、毎年異なる観測や実験の文脈に置き換えられます。
過去問対策の目的はテーマを当てることではありません。「初見の設定から既知のモデルを見抜く練習」を重ねることです。
傾向1――三分野構成は安定しています
近年の東大地学では、第1問の宇宙、第2問の大気・海洋、第3問の固体地球という配置が定着しています。このため、特定分野だけに頼る戦略は取りにくい試験です。
第1問では、恒星や銀河の観測から物理量を求める問題が中心です。光度、等級、温度、半径、距離、視線速度、軌道運動などが組み合わされます。第2問では、大気の熱力学と運動、雲、風、海流、潮汐、波などが扱われます。第3問では、地震波、地球内部、プレート、マグマ、岩石、地層、地質図が問われます。
ただし分野の境界は完全ではありません。潮汐では天体の引力と海洋運動を結び、火山ではプレート運動と岩石の化学組成を結びます。2022年度には大気・海洋の大問でプレートも扱われました。教科書を章ごとに覚えるだけでなく、同じ原理が別分野でどう働くかを意識しましょう。
傾向2――計算は公式暗記より「立式」が難しい
東大地学の計算では、極端に複雑な数学を使うことは多くありません。指数、対数、比例、三角比、単位換算、簡単な微分的考察が中心です。しかし、必要な量を問題文から選び、適切な関係式を立てるまでが難しく作られています。
たとえば2023年度は、恒星の光度・温度と半径、超新星残骸の膨張、断熱減率と凝結高度、潮汐、アイソスタシー、マグマの組成など、異なるモデルの計算が続きました。2025年度は銀河系の回転と視線速度、大気質量、プレートの厚さ・密度など、2026年度は赤方偏移、超新星による距離、降水の潜熱、地震波速度などが問われています。
計算時は次の手順を固定すると安定します。
- 求める量と単位を先に書きます。
- 問題文にある既知量へ記号を付けます。
- 図に方向、距離、角度を書き込みます。
- 数値を代入する前に文字式を作ります。
- 桁、単位、有効数字を確認します。
特に重要なのが次元確認です。速度を求める式が長さ÷時間になっているか、密度が質量÷体積になっているかを見るだけで、多くの立式ミスを発見できます。天文学では天文単位、パーセク、光年、等級、地球科学ではPa、hPa、km、kg/m³、g/cm³などが混在するため、単位換算を後回しにしないことが大切です。
傾向3――問題文で与えられたモデルを使う力が問われます
東大地学には、教科書にそのまま載っていない式や設定がしばしば登場します。しかし、それは大学内容を暗記している受験生だけを選ぶためではありません。文章や図の中に必要な関係が与えられ、それを基本法則と組み合わせられるかを見ています。
たとえば、銀河の回転速度から視線方向成分を求める問題なら、まず幾何学的な位置関係を図で理解します。地震波の直接波と屈折波なら、距離と到着時刻の関係を、直線の傾きや切片として読みます。大気のエネルギー収支なら、放射、潜熱、顕熱の出入りを矢印で整理します。
長い説明文を読んだ直後に計算を始めるのではなく、「これは何を一定と仮定したモデルか」「どの量が比例するか」「観測値は理論上の何に対応するか」を一文で言い換えましょう。文章をモデルへ翻訳できれば、数式はかなり単純になります。
この力を伸ばすには、解説を読むときに完成した式だけを覚えないことです。「なぜこの式を使うのか」「図のどの部分がこの項に対応するのか」を説明し、自分で立式を再現します。
傾向4――論述は短くても、原理と因果が必要です
論述問題では、現象名だけでなく理由を問われます。たとえば「なぜ雲の高さが緯度によって異なるか」「なぜ海嶺から離れた海洋プレートが深くなるか」「なぜ地震波の到着時刻が観測地点によって変わるか」といった問いです。
合格答案の基本形は、「原因となる物理過程→生じる変化→問われた結果」です。海洋プレートなら、海嶺から離れるにつれて冷却され、厚さと平均密度が増し、アイソスタシーにより沈降する、という因果を一続きにします。単に「古いから沈む」では、媒介する過程が抜けています。
一方、長く書けばよいわけでもありません。設問が求めるのが一つの理由なら、関連知識を三つ並べるより、決定的な過程を明確に書くほうが得点につながります。主語を明示し、「~により」「その結果」を使って関係を見せます。
練習時は模範解答を写すだけでなく、次の三点を点検します。
- 問いの対象と比較条件を外していないか
- 原因と結果の間に必要な過程があるか
- 専門用語を、意味のある動詞と結びつけているか
傾向5――図表の読み取りと作図が合否を分けます
10年分の問題冊子には、HR図、スペクトル、天体配置、大気断面、天気図、海流分布、地震走時曲線、相図、地質図、柱状図など、多様な図が登場します。東大地学では図表が補助資料ではなく、問題の中心です。
グラフでは、軸の量と単位、対数目盛かどうか、傾き、変曲点、複数曲線の交点を見ます。模式図では、矢印の向き、断面か平面か、誇張された縮尺、基準面を確認します。地質図では、地層境界と等高線の関係、走向・傾斜、不整合、断層、貫入の新旧関係を読みます。
作図問題では、美術的な正確さより物理的な条件が重要です。ベクトルなら始点・方向・相対的な長さ、グラフなら通る点・傾き・極値、地質断面なら地表の境界と傾斜を一致させます。答案を描いた後、「この図が示すべき性質を言葉で説明できるか」を確認しましょう。
図を読む力は、見るだけでは身につきません。教科書や資料集の図を閉じ、白紙に再現して各要素の意味を説明する練習が有効です。
傾向6――宇宙分野は観測量を物理量へ変換させます
宇宙分野では、直接測れない距離、質量、半径、速度を、明るさ、スペクトル、周期、角度などの観測量から推定させます。これは10年間を通じた中心テーマです。
重点的に固めたいのは、ケプラーの法則、万有引力、黒体放射、シュテファン・ボルツマンの法則、ウィーンの変位則、等級、年周視差、ドップラー効果、HR図、恒星進化です。公式を単独で覚えず、「何を観測すれば何が分かるか」と対にします。
2025年度の銀河回転では、円運動を視線速度へ投影する幾何が必要でした。2026年度の銀河の赤方偏移とIa型超新星では、スペクトルによる速度と、絶対等級・見かけの等級による距離が組み合わされました。公式ごとの練習だけでなく、複数の観測手段を連結する問題に慣れる必要があります。
傾向7――大気海洋分野は力学と熱力学を往復します
大気・海洋では、風や流れを扱う力学と、温度・相変化・放射を扱う熱力学が結びつきます。頻出事項は、断熱変化、安定度、凝結高度、気圧傾度力、コリオリ力、地衡風・地衡流、大気大循環、海流、エルニーニョ、潮汐、波です。
空気塊の問題では、乾燥断熱減率、湿潤断熱減率、露点温度の変化を、上昇前・凝結開始・雲形成後に分けます。風や海流では、どの力がどの方向に働き、どの力とつり合うかを図示します。北半球と南半球、低気圧と高気圧を混同しないよう、暗記よりベクトル図で理解します。
2026年度は、雲の高度分布から大気循環や放射を考え、暖水渦の水温断面から流れを推定しました。初見の図でも、静力学、熱収支、コリオリ力と圧力傾度力という基本原理へ戻れば解けます。
傾向8――固体地球分野は観測・実験から地下を推定します
直接見ることのできない地下構造を、地震波、重力、熱、岩石試料、地質構造から推定するのが第3問の基本です。地震波速度、走時曲線、モホ面、アイソスタシー、プレート境界、海嶺、ホットスポット、マグマ分化、放射年代、地質図が重要です。
2023年度は重力変化と盆地の水量、アイソスタシー、火山体を扱い、2024年度は地震波と地質図、2025年度は海嶺と海洋プレート、2026年度は直接波・屈折波と岩石試料から地殻・マントルを推定させました。知識問題というより、複数の観測を統合して最も整合的な地下モデルを作る問題です。
岩石・鉱物では、名称と写真だけでなく、密度、化学組成、晶出順序、生成場所を関連づけます。玄武岩・斑れい岩・かんらん岩が、海洋地殻や上部マントルのどこに対応するかまで説明できる状態にしましょう。
実戦的な問題の解き方
1.大問全体を眺めます
最初に問1と問2の題材、図表、計算量を確認します。前半で求めた値を後半で使う問題や、設問文が前の問いのヒントになる問題があります。
2.既知量・未知量・仮定を分けます
問題文の数値へ記号を付け、求める量を丸で囲みます。「球とみなす」「一定とする」「無視できる」などの仮定は立式を単純化する鍵です。
3.原理を一つ決めます
数値を代入する前に、使う原理を言葉で書きます。「放射エネルギーは表面積と温度の4乗に比例する」「地殻はアイソスタシーでつり合う」などです。式を思いつかないときも、比例関係から部分点を狙えます。
4.標準形の図へ描き直します
天体配置、力のつり合い、地震波経路、熱収支を簡単な図にします。問題冊子の複雑な図をそのまま眺めるより、必要な要素だけの図へ変換したほうが立式しやすくなります。
5.結果の妥当性を確認します
符号、桁、単位を見ます。恒星の半径が不自然に小さくないか、地震波速度の大小が逆でないか、海洋プレートの密度が海水より小さくなっていないかを常識的に点検します。
時間配分と捨て問の判断
理科2科目で150分なので、地学には75分前後が基本です。ただし、もう一科目との相性に応じて70~80分で調整します。地学75分なら、全体確認3分、大問1題22分程度、見直し6分が一つの目安です。
東大地学では、一つの計算に時間を使い過ぎると後半の基礎問題を失います。各大問の冒頭にある用語、典型計算、選択問題を先に確保し、立式が見えない問題には印を付けて進みます。途中式だけでも書ける問題なら、使う原理と文字式を残してから移りましょう。
過去問演習では、正答率だけでなく小問ごとの所要時間を記録します。計算、長文読解、作図のどこで時間を失うかを把握し、本番の解く順を固定します。
1年間の学習計画
春~夏:全範囲の原理を理解します
教科書の地学基礎・地学を一通り終え、用語、基本図、標準公式を固めます。宇宙、大気海洋、固体地球、地史のどれかを捨ててはいけません。公式は導出または意味を説明できるようにし、単位と代表値も覚えます。
問題演習では、典型計算を一問ずつ確実にします。天体の等級、軌道、断熱変化、地衡風、地震波、アイソスタシー、放射年代は、自力で式を立てられるまで反復します。
秋:東大型の長文・複合問題へ進みます
過去問を分野別に並べ、宇宙10年分、大気海洋10年分、固体地球10年分の順に解く方法が有効です。同じ原理が別の設定にどう使われるかが見えます。解答後は、問題文のどの情報が立式の手掛かりだったかを記録します。
論述は毎回書き直します。模範解答から不足していた因果を確認し、翌日に何も見ず再現します。作図問題も省略せず、採点者に伝わる線、矢印、ラベルを練習します。
冬~直前期:理科2科目150分で完成させます
年度別の通し演習へ移り、もう一科目と合わせて150分で解きます。難しい年度も使い、完答できない状況で得点を最大化する練習をします。
直前期は、誤答した問題、基本図、公式の適用条件、単位換算を見直します。新しい難問を広げるより、過去に立式できなかった問題を白紙から再現できる状態にするほうが効果的です。
復習ノートは失点の原因で分類します
誤答は次のように分類すると改善しやすくなります。
- 知識不足:用語・法則・代表値を知らなかった
- 読解不足:仮定や条件を見落とした
- 立式不足:使う原理は分かったが式にできなかった
- 図解不足:方向や位置関係を誤った
- 計算ミス:単位、指数、有効数字を誤った
- 論述不足:原因と結果の間の過程が抜けた
- 時間不足:一問に固執して後半を失った
同じ分類が続くなら、問題数を増やすだけでは不十分です。立式不足なら文字式の再現、図解不足なら白紙への作図、時間不足なら制限時間付きの小問演習を増やします。
まとめ――東大地学は「未知を基本原理へ翻訳する試験」です
10年分から見える東大地学の本質は、細かな知識の量ではなく、観測や実験を基本原理で説明する力です。宇宙では観測量から距離や質量を求め、大気海洋では熱と力のつり合いを考え、固体地球では地震波や岩石から地下構造を推定します。
そのための学習は、公式暗記で終わらせてはいけません。図を描き、単位を確認し、公式の意味を説明し、初見設定で立式する練習が必要です。さらに、短い論述で因果を示し、2科目150分の中で難問を見極める力を磨きます。
基礎原理を夏までに完成させ、秋に分野別の過去問で応用範囲を広げ、冬に年度別の実戦演習を積めば、見慣れない題材にも対応できます。問題文を読んだ瞬間に知らないテーマだと諦めず、「これは教科書のどの原理に戻せるか」と考えてください。その翻訳ができるようになったとき、東大地学は安定して得点できる科目になります。
旧帝大対策のまとめはこちらです!↓

