東京大学(前期日程)の地理対策

本記事では東京大学(前期日程)の地理対策について記載しています。
試験時間は社会2科目で150分で、配点は2科目で120点です。
東京大学(前期日程)の入試情報
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各項目の傾向と対策
東京大学の地理は、知識問題のように見えて、実際には「資料と知識を結びつけ、短い文章で理由を説明する試験」です。2017年度から2026年度までの10年分を見渡すと、大問3題という構成は変わらず、地図、統計表、グラフ、地形図などを用いた問題が毎年大量に出されています。
特徴的なのは、一つひとつの論述が30~90字程度と短いことです。長い論文を書く力より、資料の特徴を素早くつかみ、気候・地形・産業・人口・歴史的背景などから必要な要素だけを選ぶ力が求められます。しかも地理歴史2科目を150分で解くため、世界史や日本史との時間配分まで含めて実力になります。
近年は論述量も増えています。2024年度は論述17問・計990字、2025年度は19問・計1,170字、2026年度は21問・計1,200字でした。2026年度は単答問題が4問まで減り、ほとんどの得点を短論述で積み上げる構成です。東大地理を攻略するには、知識、資料読解、表現、時間管理の四つを一体として鍛えなければなりません。
東大地理の基本構造
試験は地理歴史2科目合わせて150分、120点満点です。地理だけの制限時間はありませんが、均等に配分すれば約75分です。大問は3題で、それぞれがA・Bなどの中問に分かれ、多数の小問が並びます。
解答用紙は1行30字のマス目です。論述は2行、すなわち60字が中心で、30字や90字もよく出ます。年度によっては120字論述や計算問題、語句を答える単答問題もあります。大きな一問に時間をかけるというより、20問前後の判断と記述を連続して行う試験です。
出題分野は大まかに次の三層で構成されます。
- 自然環境と人間活動:地形、気候、海洋、災害、環境問題、資源利用
- 世界の産業・社会:農林水産業、工業、貿易、交通、人口、言語、観光
- 日本の地誌・社会:人口移動、都市、産業、土地利用、林業、防災
ただし、大問ごとに分野が完全に分かれるわけではありません。自然環境の問題で農業や資源が問われ、人口問題で産業構造や交通網が問われます。この「分野をまたぐ」性質こそ東大地理の核心です。
10年分の年度別テーマ
各年度の大問テーマを、受験対策の観点から整理すると次のようになります。
| 年度 | 第1問 | 第2問 | 第3問 |
|---|---|---|---|
| 2017 | 島と海、太平洋島嶼と大きな島々 | 水資源・農業と環境問題 | 世界の人口と人口構成 |
| 2018 | 地球環境、二酸化炭素、熱帯低気圧 | 世界の運輸・地域間移動 | 日本の都市・土地利用と地域変化 |
| 2019 | 東・東南アジアの海岸・河川、自然環境と人間活動 | 国際貿易と国際旅行 | 日本の産業構造と国土 |
| 2020 | 日本列島の地形と自然資源利用 | 世界の食料生産と消費 | ドイツと日本の人口動向 |
| 2021 | 世界の環境と地形、気候変化 | 世界の言語状況と教育 | 世界と日本の女性労働 |
| 2022 | 感染症、航路など世界規模の分布と変化 | 南北アメリカの経済と社会 | 日本の都市と農業、地形図読図 |
| 2023 | 人新世、南アジアなど人間活動と地球環境 | 第一次産業の国際比較 | 日本の居住・住宅と自然災害 |
| 2024 | 世界の食料資源とエネルギー資源 | 世界の地勢と人口変化 | 都市 |
| 2025 | 自然環境への人間活動の影響 | ファストファッション、観光など経済・余暇活動 | 人口分布と移動 |
| 2026 | 海洋、サンゴ礁、ブルーカーボン、プラスチックごみ | ASEANと中国の経済・社会 | 日本の林業と水害 |
この表から、同じ分野が姿を変えて繰り返されていることが分かります。気候変化は2018・2021・2023・2025年度、人口・都市はほぼ毎年、食料や第一次産業も2017・2020・2023・2024年度などで扱われています。2026年度の海洋も、2017年度の島と海、2018年度の熱帯低気圧、2019年度の海岸・河川とつながります。
したがって、過去問は「一度出たテーマはもう出ない」と考えるのではなく、同じ論点が別の地域、別の資料、別の社会課題と組み合わされるものとして復習すべきです。
傾向1――自然地理は暗記ではなく、因果関係を問われます
10年間を通じて最も安定して出ているのが、地形・気候・植生・海洋などの自然地理です。ただし、地形名や気候区分を答えるだけではありません。「なぜそこに分布するのか」「人間活動にどのような影響を与えるか」「人間活動によってどう変化したか」を説明させます。
たとえば2018年度の熱帯低気圧では、海水温、緯度、恒常風、進路、被害地域の人口や土地利用を関連づけます。2021年度の河口・湾岸地形では、地形形成だけでなく養殖や環境変化へつなげます。2025年度の永久凍土や河川流域、2026年度のサンゴ礁、海山、ブルーカーボン、海洋プラスチックでは、自然の仕組みと人間による利用・汚染・対策を一体として考えます。
対策では、用語ごとに「形成要因」「分布」「人間生活との関係」「変化・災害」の四点を整理します。扇状地なら形成過程だけでなく、土地利用、水はけ、集落位置、水害まで説明できるようにします。サンゴ礁なら高水温、浅く清澄な海、島の沈降や海山、観光・漁業、海面上昇や白化現象まで知識を広げます。
自然地理は図を描く学習が有効です。プレート、風系、海流、河川地形、海岸地形を自分で簡略化して描き、矢印の横に原因と結果を書きましょう。「用語を見れば説明できる」段階から、「図を見れば因果関係を再現できる」段階に進む必要があります。
傾向2――資料は答えではなく、知識を呼び出すスイッチです
東大地理では、見慣れない統計や独自に加工された図表が頻繁に出ます。しかし、細かな数値をすべて計算する必要はありません。重要なのは、資料が何を比較し、どの差や変化が目立つかをつかむことです。
資料を読むときは、まずタイトル、単位、年次、地域、凡例を確認します。次に最大・最小、増減の転換点、他と異なる項目、共通する動きを見ます。そのうえで、設問が求める「理由」「影響」「地域差」に関係する部分だけを拾います。
たとえば国別統計から国名を判定する場合、単一の数値で決めつけてはいけません。人口規模、産業構成、輸出品、人口増加率など複数の特徴を組み合わせます。グラフの変化を説明する場合も、「増えた」「減った」で終わらず、その時期に起きた政策、経済発展、交通整備、感染症、災害などを結びつけます。
また、前の小問で判定した国や地域が、後の論述の前提になる「連動型」が多いことにも注意が必要です。一つの判定ミスを引きずらないよう、資料全体と矛盾しないかを必ず確認します。逆に、後の設問文が前の判定のヒントになることもあるので、中問全体を先に眺める習慣が有効です。
傾向3――60字論述は「差+理由」が基本形です
東大地理の中心は60字論述です。2023・2024年度は論述17問中12問が60字であり、2026年度も60字問題が多数を占めました。60字では、背景から丁寧に説明する余裕はありません。
答案の基本形は次の通りです。
- 資料から読み取れる特徴や結論を示します。
- その理由となる自然的・社会的条件を示します。
- 必要に応じて結果や影響を加えます。
「AはBより多い。なぜなら~だからである」という骨格です。比較を求められたら両者を明示し、二つの理由を求められたら観点を分けます。自然的条件と社会的条件を一つずつ、供給側と需要側を一つずつ、国内要因と国際要因を一つずつ、というように整理すると重複を防げます。
指定語句がある問題では、語句を入れること自体が目的ではありません。その語が原因なのか、過程なのか、結果なのかを判断します。「天候」「稚魚」「若年層」など一見使いにくい語も、設問が期待する視点を示すヒントです。語句を無理に文末へ付け足すのではなく、論理の中心に置きます。
添削時には、模範解答との語句の違いより、問いの要求を満たしているかを確認します。「二つ答えよ」に一つしか答えていない、比較なのに片方しか書いていない、資料の変化に触れていない、といった条件落ちは大きな失点になります。
傾向4――人口・都市・産業は、日本と世界を往復します
人口、都市、産業は毎年のように形を変えて出ます。2020年度はドイツ統一後の州別人口変化と日本の三大都市圏、2021年度は女性の労働、2023年度は日本の住宅、2024年度は世界の人口変化と都市、2025年度は首都圏の人口集中地区とコロナ禍の移動、2026年度はASEAN・中国の産業と人口が扱われました。
ここでは、統計用語の理解と地域の背景知識が必要です。人口増減なら自然増減と社会増減、都市化なら郊外化・都心回帰・過疎化、産業なら立地条件・国際分業・サービス経済化を区別します。
日本地理は都道府県名を覚えるだけでは不十分です。三大都市圏、地方中枢都市、過疎地域、工業地域、農業地域、交通網を地図上で重ねます。世界地理では、人口転換、移民、植民地支配の影響、言語、宗教、所得水準などが統計の背景になります。現象を説明する際に、「先進国だから」「発展途上国だから」で止めず、具体的な制度や産業、人口構成まで示しましょう。
傾向5――現代社会の課題が定番化しています
近年は、教科書の基本事項を時事的な素材で問う問題が増えています。人獣共通感染症、人新世、PM2.5、食料安全保障、深海底資源、ファストファッション、オーバーツーリズム、コロナ禍の人口移動、ブルーカーボン、マイクロプラスチック、グリーンインフラなどです。
ただし、ニュースの知識だけで解く試験ではありません。初めて見る用語でも、リード文や資料の説明と既習知識を組み合わせれば推論できるように作られています。ブルーカーボンを知らなくても、海草・湿地などの生態系が二酸化炭素を吸収・貯留すること、温暖化対策に関係することを読み取れれば答案の方向は見えます。
時事対策では、ニュースを大量に暗記する必要はありません。「場所」「原因」「影響」「対策」「対策に伴う課題」の五項目でメモします。気候変動、資源・エネルギー、食料、人口移動、都市、防災、観光、国際分業を優先しましょう。統計資料集のコラムや教科書の探究ページは、東大型の素材に近く有効です。
傾向6――地形図は出ない年があっても捨てられません
地形図読図は2022・2023年度に連続して出題され、2024・2025年度は見られませんでしたが、2026年度に復活しました。出題間隔を予想して捨てるのは危険です。
対策すべき基本は、等高線、谷と尾根、河岸段丘、扇状地、三角州、旧河道、土地利用、集落、道路・鉄道の位置です。新旧地形図の比較では、宅地化、河川改修、交通網の発達、農地減少などを読みます。災害問題では、低地の浸水、谷出口の土石流、急斜面の崩壊など、地形とリスクを結びつけます。
地形図だけを眺めるのではなく、「この土地に住宅を建てる利点と危険」「なぜ道路がこの経路を通るか」を言葉にしてください。読図の最終目的は記号判定ではなく、地域の成り立ちと人間活動を説明することです。
実戦で使える解答手順
1.中問全体を先に見ます
リード文と資料のテーマ、設問数、論述字数を確認します。前後の小問が連動している場合は、後の設問も判定材料になります。
2.設問の動詞と条件に印を付けます
「説明せよ」「比較せよ」「理由を述べよ」「二つの点から」などを囲みます。指定地域、時期、語句も確認します。東大地理では、知識不足より条件の見落としで点を失うことが少なくありません。
3.資料から使う事実を一つか二つ選びます
答案に必要な差、増減、分布を特定します。すべての数値を盛り込まず、設問に直接関係するものだけを使います。
4.背景知識を接続します
自然的要因なら気候・地形・海流・土壌、社会的要因なら人口・所得・政策・交通・技術・歴史を候補にします。複数の観点が必要かを考えます。
5.結論から書き、30字単位で調整します
一文目で答えを示し、二文目で理由を補います。主語を省きすぎて対象が不明になる答案や、資料の数値を写しただけの答案を避けます。練習時から30字、60字、90字の枠に手書きし、字数感覚を養います。
時間配分の作り方
世界史や日本史と組み合わせる場合、地理には70~80分程度を置くのが現実的です。地理75分なら、大問1題につき約23分、最後の見直しに6分という配分が目安です。
しかし、2026年度のように第1問の論述量が多い年もあるため、三等分を厳守する必要はありません。開始後2~3分で全体を見て、資料が読みやすい大問から着手します。単答や典型論述は確実に回収し、難しい一問で止まらないことが重要です。
一問の判定に迷ったら印を付けて進みます。空欄を残さないことは大切ですが、資料全体の読み違いを長時間修正するより、他の独立した小問で得点するほうが安全です。見直しでは、国名判定、単位、計算、指定語句、要求された要素数を優先します。
1年間の学習計画
春~夏:基礎知識と地図を結びつけます
教科書を自然地理、産業、人口・都市、地誌の順に進め、遅くとも夏までに全範囲を一周します。学んだ事項は必ず地図帳で位置を確認します。統計資料集では順位の丸暗記ではなく、なぜその国が上位なのかを説明します。
自然地理と日本地誌は手薄にしないでください。気候・地形の仕組み、日本の農林水産業、工業、人口移動、都市、防災を重点的に固めます。夏から週に数題、30~90字論述を始めます。
秋:過去問を分野別に解きます
最初から年度を通して解くだけでなく、「気候変動」「人口・都市」「農業」「交通・貿易」「災害」のように10年分を分野別に並べます。同じ知識が異なる資料でどう問われるかを比較すると、応用可能な型が見えます。
答案の復習では、資料から拾う情報と、自分の知識から補う情報を色分けします。模範解答を写した後、何も見ずに同じ設問をもう一度60字で書き直します。
冬~直前期:2科目150分で完成させます
地理単独の75分演習に加え、もう一つの地歴科目と合わせた150分演習を行います。地理を先に解くか後に解くか、何分で切り替えるかを固定します。資料を読む時間、構成する時間、書く時間のどこで遅れているかも記録します。
直前期は新しい細目を広げすぎず、過去問の誤答、地図帳、統計の主要傾向、時事テーマを見直します。特に、複数回登場した自然環境、人口・都市、食料・資源、日本地誌を優先します。
復習ノートに残すべき失点原因
誤答は次のように分類すると改善しやすくなります。
- 知識不足:用語や地域の特徴を知らなかった
- 資料誤読:単位、凡例、年次、増減率を読み違えた
- 判定ミス:一つの特徴だけで国・地域を決めた
- 条件落ち:比較、理由の数、指定語句を外した
- 因果不足:資料の特徴だけを書き、理由がなかった
- 表現不足:主語や比較対象が曖昧だった
- 時間不足:難問に固執し、後半を解けなかった
同じミスが続くなら、知識を増やすだけでは解決しません。資料誤読なら確認順序を固定し、条件落ちなら設問への印付けを徹底し、表現不足なら短論述の書き直し回数を増やします。
まとめ――東大地理は「資料から因果を再構成する試験」です
10年分を通じて見える東大地理の本質は、地理用語をどれだけ暗記したかではありません。初見資料の特徴を見抜き、教科書の基本知識と結びつけ、地域差や変化の理由を短く表現できるかです。
自然地理では形成過程と人間活動を結び、産業・人口では地域の社会的背景を説明し、日本地誌では具体的な場所を地形・交通・政策と関連づけます。さらに現代社会の課題を、地理的な原因と対策の両面から考えます。
合格への道筋は明確です。夏までに基礎知識と地図を固め、30~90字論述を早期に始め、秋には過去問を分野横断で分析し、冬には2科目150分で処理速度を完成させます。過去問を答えの暗記に使うのではなく、「どの資料から何を読み、どの知識を呼び出すか」を学ぶ教材として使ってください。その手順が自動化されたとき、資料が多く論述量が増えた年度でも、得点を安定させられるようになります。
旧帝大対策のまとめはこちらです!↓

