京都大学(前期日程)の国語(理系)対策

本記事では京都大学(前期日程)の国語(理系)対策について記載してます。
国語の試験時間は文系が120分で、理系が90分です。配点はこちらをご参照ください。
文系は一二三、理系は一四五(一部問題を除く)に回答します。
目標得点率は65以上に設定して勉強していきましょう。
京都大学の入試情報
京都大学の公式サイトをご参照ください。
各項目の傾向と対策
京都大学の理系国語は、「理系向けだから文章が短く、対策しなくても何とかなる試験」ではありません。試験時間は90分ですが、現代文二題と古文一題を解き、ほぼすべての設問で記述答案を作ります。本文を読むだけなら間に合っても、根拠を集め、広い解答欄に自分の言葉でまとめているうちに時間が足りなくなるのが典型的な失敗です。
一方、出題形式は非常に安定しています。2017年度から2026年度までの10年分を通覧すると、求められる能力と答案作成の手順はかなり明確です。過去問を使って「どこまで読めばよいか」「どの要素を入れるか」「何分で書き切るか」を訓練すれば、国語を安定した得点源にできます。
本記事では、10年分の出題を年度別に整理したうえで、第一問・第二問・古文の特徴、京大型記述の作り方、90分の時間配分、理系受験生向けの効率的な学習計画を解説します。
1.10年間で変わらない基本形式
京大理系国語は、試験時間90分、100点満点で、基本的に次の三題から構成されます。
| 大問 | 内容 | 配点の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 第一問 | 現代文 | 40点 | 文系との共通文章。理系は文系より設問が一問少ないのが基本です |
| 第二問 | 現代文 | 30点 | 理系独自問題。評論・随筆・文学論など幅広く出ます |
| 第三問 | 古文 | 30点 | 理系独自問題。現代語訳と説明問題が中心です |
解答はほぼ全面的に記述式です。典型的な設問は「どういうことか、説明せよ」「なぜか、説明せよ」で、解答欄は一問につき二~五行程度あります。大問ごとの設問数は三~四問ほどですが、一問の記述量が多いため、問題数が少ないという印象に惑わされてはいけません。
特に重要なのは、第一問だけが文理共通であり、第二問と第三問は単なる文系問題の短縮版ではないという点です。理系第二問には、理系受験生が読みやすい科学論が出る年もありますが、短歌論、文学論、追悼文、感性的な随筆なども出ます。古文も文系と別の出典で、歌論や近世随筆が多く見られます。
形式が安定していることは大きな利点です。本番で新しい解法を考える必要はなく、過去問で身につけた読解・記述・時間管理の手順を再現すればよいからです。
2.年度別に見る10年間の出題
| 年度 | 第一問・現代文(文理共通) | 第二問・現代文(理系独自) | 第三問・古文(理系独自) |
|---|---|---|---|
| 2017 | 串田孫一「山村の秋」。記憶と想像をめぐる随想です | 安藤宏『「私」をつくる――近代小説の試み』。言文一致と「私」の表現を論じます | 中島広足『海人のくぐつ』。親しい人との死別を扱う近世の文章です |
| 2018 | 佐竹昭広「意味変化について」。言語と人間の心の関係を論じます | 湯川秀樹「科学と哲学のつながり」。科学の方法と限界を扱います | 西山宗因『肥後道記』。流浪の経験を記した近世紀行です |
| 2019 | 金森修『科学思想史の哲学』。近代科学と寺田寅彦の物理学を対比します | 吉田秀和「音を言葉でおきかえること」。批評と言語表現を論じます | 『落窪物語』。和歌を含む平安時代の物語です |
| 2020 | 小川国夫「体験と告白」。文学と人間の真実をめぐる文学論です | 小松和彦『妖怪学新考』。近代化と日本文化の変質を論じます | 富士谷御杖『北辺随筆』。古語の意味の変遷を扱う国学者の文章です |
| 2021 | 西谷啓治「忘れ得ぬ言葉」。人間関係を考察する随筆です | 岡井隆「韻と律」。現代短歌の定型と表現を論じます | 『正徹物語』。和歌の上達を論じる中世の歌論です |
| 2022 | 岡本太郎『日本の伝統』。伝統主義を批判し、創造を論じます | 多和田葉子「雲をつかむ話」。比喩と言葉遊びの多いエッセイです | 『建礼門院右京大夫集』。死別した恋人の回想と和歌を含む私家集です |
| 2023 | 福田恆存『芸術とはなにか』。演劇と芸術の理想を論じます | 福永武彦「小山わか子さんの歌」。生と死をめぐる追悼文です | 松岡行義『後松日記』。為政者を論評する近世随筆です |
| 2024 | 奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を』。言語学習をめぐる随筆です | 石原純『永遠への理想』。科学と芸術の永遠性を論じる大正期の文章です | 『草庵集玉箒』。和歌の解釈を扱う近世の注釈書です |
| 2025 | 中井久夫「現代社会に生きること」。都市化と自然の関係を考察します | 佐野洋子『友だちは無駄である』。友人と生の豊かさを描く感性的随筆です | 本居宣長『玉勝間』。言語・文章について論じる近世随筆です |
| 2026 | 坂口安吾「恋愛論」。恋愛を題材に日本語を論じる随筆です | 松永澄夫『感情と意味世界』。「共生」という語の空洞化を論じます | 『一言芳談』。念仏者の教えを記した中世の法語集です |
この一覧から分かるのは、第一に、理系でも文学・芸術・言語に関する文章が非常に多いことです。科学を直接扱う2018年度や2019年度、科学と芸術を扱う2024年度はありますが、数式や専門知識を使って読む問題ではありません。筆者が科学をどのように定義し、何と対比し、どこに限界や価値を見ているかを言語化する問題です。
第二に、第二問の振れ幅が大きいことです。論理の明快な評論だけでなく、2022年度の言葉遊びを含むエッセイ、2023年度の追悼文、2025年度の感性的随筆のように、明示されていない心情や表現の含みを読ませる年があります。論説文の接続語を追うだけの勉強では不十分です。
第三に、古文では近世随筆や歌論など、論理的な文章が目立ちます。ただし、2019年度の物語や2022年度の私家集もあり、出典を一種類に絞ることはできません。和歌が直接問われない年でも、和歌の理解を前提に本文や心情を説明させることがあります。
3.第一問の傾向――共通問題を30分台で処理する力
第一問は文系との共通文章で、理系では通常、文系より一問少ない形で出題されます。しかし、文章自体の水準は文系と同じです。抽象的な評論だけでなく、随筆、文学論、芸術論が多く、比喩や筆者独自の表現を平明な日本語へ直す力が必要です。
典型的な設問は三種類あります。一つ目は、傍線部の指示語・抽象語・比喩を具体化する内容説明です。二つ目は、原因と結果を明示する理由説明です。三つ目は、文章全体の主題を踏まえて傍線部を説明する全体型の問題です。最後の設問ほど参照範囲が広くなる傾向があります。
京大の難しさは、本文中に解答が一文の形で置かれていないことです。必要な要素が複数の段落に散らばっており、筆者の表現をそのままつなぐと、抽象語を抽象語で説明する循環答案になります。そこで、筆者の中心語は残しつつ、語と語の関係を補う必要があります。
例えば「伝統」「身体」「疎外」「永遠」といった語が傍線部にあれば、別の一語へ置き換えるだけでは足りません。その文章内で何を指すのか、何と対比されるのか、どのような結果をもたらすのかまで説明します。
第一問は配点が高い一方、難問に粘ると90分全体を崩します。目標時間は30~33分です。読みやすい設問から骨格を作り、全体型の難問は中心要素を確保して一度離れる判断が必要です。
4.第二問の傾向――「理系らしい評論」だけではない
第二問は理系独自問題で、三問程度の記述が中心です。科学、文化、言語、批評など論理構造の見えやすい文章が出ることもあります。しかし、京大は理系受験生にも文学的な文章を読む力を要求しています。
論理的文章では、定義と対比を取ります
2018年度の科学論、2019年度の批評論、2020年度の文化論、2026年度の「共生」を扱う評論では、筆者が中心概念をどのように定義しているかを押さえます。文章を読みながら、対比される二項を欄外に短く書くと効果的です。
例えば「客観化できるもの/できない体験」「前近代/近代」「意味を保つ語/権威化して空洞化した語」のように整理します。答案では片側だけでなく、対比の両側を示すと説明が明確になります。
随筆では、出来事と意味を分けます
随筆や追悼文では、本文に書かれた出来事を要約するだけでは不十分です。その出来事を通じて筆者が何に気づき、どのように認識を変えたかを説明します。
2025年度のような感性的随筆では、筆者の心情が論理的命題として明示されないことがあります。反復される語、具体的なエピソードの前後、文章末尾の認識に注目し、「出来事→気づき→評価・心情」という順に整理します。本文にない一般論や自分の感想を加えてはいけません。
古い文体にも慣れておきます
第二問には昭和前期の文章や、大正期の文章も出ます。旧仮名遣いや「しからば」「けだし」など古めかしい語に出会っても、古文として読む必要はありません。現代仮名遣いへ直し、主語と述語、修飾関係を確認します。週に一度、明治~昭和期の随筆や評論を読むだけでも抵抗感は下がります。
5.古文の傾向――物語よりも随筆・歌論への対応が重要
第三問は三問程度で、現代語訳と内容・理由説明が中心です。文章量が短い年でも、一文を精密に訳す力と、本文全体の論旨を数行にまとめる力が問われます。
10年間では、近世紀行、物語、国学者の随筆、中世歌論、私家集、和歌注釈書、法語集などが出ました。特に随筆・歌論・注釈書の比率が高く、「古文は人物の恋愛関係を追えばよい」と考えると対応できません。筆者が何を批判し、何を正しいと考え、どの例を根拠にしているかを、現代文と同じように整理します。
現代語訳は「逐語訳+具体化」で作ります
まず、重要単語、助動詞、助詞、敬語を一語ずつ訳します。その後、省略された主語・目的語や指示語の内容を補います。最初から自然な意訳を作ろうとすると、助動詞の意味や重要語の訳が抜けます。
設問に「適宜ことばを補って」「指示内容を明らかにして」とあれば、それ自体が採点条件です。「これ」「かく」「さこそ」などを残さず、何を指すかを書きます。人物が多い文章では、敬意の方向から動作主と対象を確定します。
和歌は地の文と切り離しません
2019年度や2022年度のように、和歌の修辞・意味・詠まれた状況が読解を左右する年があります。掛詞、縁語、序詞といった知識を確認したうえで、誰が誰に対して、どのような状況で詠んだかを押さえます。歌の景物が人物の境遇や感情とどう対応するかを説明できるようにします。
和歌が直接設問になっていなくても、本文の心情や指示語を理解する根拠になるため、飛ばしてはいけません。
漢文も最低限は維持します
直近10年の理系国語は独立した漢文大問ではなく、中心は現代文と古文です。ただし、出題範囲として漢文を完全に捨てるのは危険です。古文や設問中に漢文・漢詩が絡む可能性に備え、重要句形、再読文字、否定・使役・受身、基本的な漢字の意味は共通テスト水準で維持しておきます。
6.京大型記述答案の作り方
京大の記述では、解答欄に直接書き始めると、途中で要素が重複したり、主語と述語がずれたりします。次の五段階を習慣にしてください。
①問いの型を決めます
設問を「内容」「理由」「心情」「表現」「全文」のどれかに分類します。「なぜか」なら原因を中心にし、原則として「から」で結びます。「どういうことか」なら、傍線部の抽象表現を具体化します。「本文全体を踏まえて」「経緯を明らかにして」などの条件には印をつけます。
②傍線部を分解します
指示語、比喩、抽象語、否定、対比、省略された主語を確認します。傍線部が長い場合は、主部と述部に切り分け、それぞれ何を説明すべきかを考えます。
③根拠を近距離と遠距離に分けます
傍線部前後にある直接根拠を第一層、文章全体の主張や前提を第二層とします。二行の答案なら第一層を中心にし、四~五行なら第二層まで加えます。解答欄の広さは、説明の深さを示すヒントです。
④要素を関係で並べます
答案を書く前に、「原因→結果」「対比→結論」「出来事→認識の変化」などの骨格を十~二十字でメモします。本文の順番をそのまま再現するのではなく、問いへの答えが伝わる順に並べます。
⑤答案だけで通じるか確認します
「それ」「このこと」などを残していないか、抽象語を同じ抽象語で説明していないか、主語と述語が対応しているかを確認します。本文を読んでいない人にも答案の意味が通じることが目標です。
7.90分の時間配分
標準的な時間配分は、第一問32分、第二問28分、第三問25分、見直し5分です。古文が得意なら第三問から始めて確実に得点し、第一問へ進んでも構いません。重要なのは、過去問ごとに順番を変えるのではなく、自分の得点が最も安定する順番を決めることです。
| 時間 | 作業 |
|---|---|
| 0~32分 | 第一問。四問すべてに触れ、難問は中心要素を確保します |
| 32~60分 | 第二問。対比または出来事と意味を整理して三問を書きます |
| 60~85分 | 第三問。逐語訳を土台に、説明問題まで完成させます |
| 85~90分 | 空欄、設問条件、主述、誤字、訳し漏れを確認します |
一問に八~十分以上止まったら、答案の核だけを書いて次へ進みます。京大国語は完全な答案を一つ作る試験ではなく、三題すべてで部分点を積み上げる試験です。第一問の難問に時間を使い切り、古文を空欄にするのが最も危険です。
過去問演習では、大問を読み終えた時刻と書き終えた時刻を記録してください。遅れの原因が読解なのか、根拠探しなのか、文章化なのかを分けると改善策が明確になります。
8.理系受験生向けの効率的な学習計画
基礎期――現代文の語彙と古文の文法を固めます
現代文では、対比、因果、具体と抽象、言い換えを取る基本を確認します。身体、他者、言語、伝統、近代、表象、疎外などの抽象語は、短い日本語で説明できるようにします。
古文では、単語、助動詞、敬語、識別を優先します。選択問題で確認するだけでなく、一文を主語つきで現代語訳します。理系科目が忙しくても、古文単語を毎日10分、文法と短文訳を週二回続けるほうが、直前期にまとめて学ぶより効率的です。
標準演習期――ジャンルの偏りをなくします
現代文は評論だけでなく、随筆、文学論、芸術論を混ぜて読みます。週二題程度でよいので、各題で一問は記述答案を完成させます。古文は物語・日記だけでなく、歌論・随筆も扱います。文章中の対比と筆者の主張を要約する練習をしてください。
京大型記述期――行数別に答案を作ります
同じ問いについて、二行版と四行版を作る練習が有効です。二行版では結論と直接根拠に絞り、四行版では前提・対比・結果を補います。これにより、「解答欄が余る」「書きすぎて結論が入らない」という失敗が減ります。
答案はできれば先生や添削者に見てもらいます。自分で復習する場合は、模範解答との表現の違いではなく、採点要素の有無を比較します。誤答原因を「根拠不足」「範囲違い」「言い換え不足」「論理関係」「表現ミス」の五つに分類すると、自分の弱点が見えます。
過去問期――一周目は技術、二周目は速度を鍛えます
一周目の最初の二~三年度は、大問別に時間を測っても構いません。その後は90分で三題を解きます。解いた後、各設問について、問いの型、根拠箇所、落とした要素、改善答案、所要時間を記録します。
二周目は、本文を覚えていても問題ありません。一周目より短い時間で根拠を確定し、より明確な答案を再現できるかを確認します。古文の本文は、二周目に全文を口頭で現代語訳すると効果的です。
9.よくある失敗と改善方法
一つ目は、本文中の言葉を並べただけの答案です。抽象語や比喩をそのまま残すと、問いを言い換えただけになります。答案中の抽象語に丸をつけ、それが何を意味するか、何との関係を示すかを補ってください。
二つ目は、理系的な評論だけを練習することです。京大では感性的な随筆、文学論、短歌論も出ます。論理が明示されていない文章では、具体的な経験と筆者の認識の変化を結びます。
三つ目は、古文を後回しにして基礎が完成しないことです。古文は知識の効果が大きく、単語・文法・敬語が整えば短期間でも安定します。国語の勉強時間が少ない理系受験生ほど、知識で失点を減らせる古文を捨てるべきではありません。
四つ目は、一問を完璧にしようとすることです。90分では、完成度を上げるほど他の問題を圧迫します。答案の中心となる結論・理由・対比を確保したら次へ進み、最後に戻る方式を徹底します。
五つ目は、模範解答を読んで理解したつもりになることです。模範解答を閉じ、同じ内容を自分の文で書き直せるかを確認します。京大で問われるのは、正解を見抜く力ではなく、正解を文章として産出する力です。
10.本番前のチェックリスト
- 「なぜか」「どういうことか」など、問いの型に正面から答えていますか。
- 指示語や比喩を具体化していますか。
- 対比の片側だけでなく、両側を示していますか。
- 長い解答欄で、文章全体の主題まで参照していますか。
- 答案の主語と述語は対応していますか。
- 古文の助動詞・助詞・敬語を訳し落としていませんか。
- 古文の指示語や省略された人物を補っていますか。
- 和歌を前後の場面と結びつけていますか。
- 一問に粘りすぎず、三題すべてに解答していますか。
- 最後の五分を見直しに残せていますか。
まとめ――理系国語は、少ない時間で正確に説明する試験です
2017~2026年度の京大理系国語は、90分で現代文二題と古文一題、ほぼ全面的な記述式という構成を維持してきました。第一問は文理共通ですが、第二問と第三問は理系独自です。科学評論だけでなく、芸術論、文学論、短歌論、追悼文、感性的随筆が出題され、古文も物語から近世随筆・歌論まで広く扱われます。
共通して求められるのは、本文の内容を正確に読み、抽象語や比喩をほどき、必要な関係を補って、第三者に伝わる日本語に直す力です。現代文では対比・因果・筆者の認識の変化を示し、古文では逐語訳を土台に主語・指示語・和歌の状況を具体化します。
理系受験生にとって、国語に使える時間は限られています。だからこそ、漫然と読書量を増やすのではなく、語彙と古文文法を固め、週ごとに記述答案を作り、過去問で90分の処理手順を固定することが重要です。満点答案を一つ作るより、三題すべてで根拠のある答案を書き、部分点を積み上げることが合格への現実的な戦略です。
旧帝大対策のまとめはこちらです!↓

