東京大学(前期日程)の英語対策

本記事では東京大学(前期日程)の英語対策について記載しています。

試験時間は120分で、配点は120点です。

東京大学(前期日程)の入試情報

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各項目の傾向と対策

東京大学の英語は、「難単語をどれだけ知っているか」だけで決まる試験ではありません。120分の中で、要約、長文の論理展開、自由英作文、和文英訳、リスニング、文法・語法、英文和訳、物語・エッセイの読解へ次々と頭を切り替えなければならない総合試験です。英文そのものが極端に難解でない年でも、読み取った内容を短い日本語や正確な英語に変換し、時間内に答案として完成させるところに本当の難しさがあります。

東京大学が公表しているのは英語全体の120点という配点で、大問別・設問別配点は公表されていません。

まず押さえたい全体像――「英語力」だけでなく処理設計が問われます

近年の基本構成は、次のように整理できます。

大問主な形式中心となる力
第1問A英文の日本語要約論旨把握、情報の取捨選択、日本語表現
第1問B長文の文補充・語句整序など段落構成、照応、論理展開、文法
第2問A自由英作文発想、論証、正確で簡潔な英文
第2問B和文英訳を中心とする表現問題和文の解釈、言い換え、英文設計
第3問リスニング3題先読み、要旨・詳細把握、言い換え認識
第4問A誤りを含む箇所の指摘文法・語法、文脈判断
第4問B下線部和訳構文把握、指示内容の補足、自然な日本語
第5問小説・エッセイ等の総合読解心情・含意・文脈、記述と客観問題の処理

この構成で最も重要なのは、各技能が独立していないことです。第1問Aでは英語を読んだ後に日本語で圧縮し、第2問Bでは日本語を解釈して英語へ組み替えます。第4問Aの正誤判定も、近年は文法知識だけでなく文章内容との整合性まで見なければなりません。第5問では単語が平易でも、登場人物が明言しない感情を描写から推測させます。つまり、東大英語の中心にあるのは「文脈を正確に捉え、要求された形へ変換する力」です。

10年間の変化――大枠は安定、細部は動き続けています

10年を一本の流れとして見ると、三つの時期に分けられます。

2017~2019年度:現在の構成が固まった転換期です

2017年度の第2問Bは、メールへの返信を書く形式でした。ところが2018年度には和文英訳が1997年以来の形で復活し、以後は第2問Bの中心として定着します。同じ2018年度には、第1問Bで15~20語程度の英語要約が加わり、第3問の各設問の選択肢が5つになり、第4問Aでは語句整序が出るなど、細部の変更が目立ちました。2018年度で形式変更が複数あった一方、求められる力そのものは例年と同じだったと整理されています。

2019年度は大きな制度変更より、典型形式の中での完成度が問われた年です。第1問Aは「ヨーロッパにおける児童の人権」、第2問Aは「新たな祝日」の提案、第2問Bはプラスチックごみ削減に関する和文英訳でした。自由英作文では単に祝日を名付けるだけでなく、その意義と理由まで限られた語数で示す必要がありました。テーマが身近でも、論拠を作れなければ書けないという東大らしさが表れています。

2020~2022年度:基本構成を保ちながら抽象度と負荷が変化しました

2020年度には、第1問Bで現在につながる語句整序と文補充の組み合わせが現れました。第2問Aの「私たちは言葉を操るのか、言葉に操られるのか」は抽象度が高く、思いつきを書くのではなく、立場と理由を短く構造化する必要がありました。第5問も語彙は平易ながら、状況と心情の読み取りが難しい物語でした。

2021年度は全体として分量がやや減り、取り組みやすい年でしたが、易しい問題を落とさない精度が重要でした。第1問Aは10代の気質の変化、第1問BはAIと芸術、第2問Aは暮らしやすい街の条件、第5問は日本を舞台にしたエッセイ風英文でした。

2022年度には第1問Aが約410語、第1問Bが選択肢込みで約990語となり、後者は前年より100語以上増えました。自由英作文は「芸術は社会の役に立つべきか」という抽象題で、リスニングは3題がすべて独立した内容になりました。東大英語では、特定形式が固定されていても文章量や題材の抽象度で負荷が調整されることがよく分かります。

2023~2026年度:形式安定の中で「文脈」と「表現」の要求が強まりました

2023年度以降、第1問Aは70~80字の日本語要約、第1問Bは文補充と語句整序、第2問Aは60~80語の自由英作文という骨格がかなり安定しています。2023年度の自由英作文は「30年後の移動手段」、2024年度は二つの主張から一つを選ぶ初の選択式、2025年度は「意見を言わないことは同意を意味するか」、2026年度は「強いとはどういうことか」でした。身近な題材、未来予測、命題への賛否、抽象概念の定義と、問い方は動いています。暗記した一つのテンプレートだけでは対応できません。

第1問Bの分量は、2023年度の選択肢込み約1040語から、2024年度約980語、2025年度900語強、2026年度900語弱へ緩やかに減少しました。しかし、文補充のダミー選択肢数や整序要素数は毎年変わります。読む量が少し減っても、局所的な判断が簡単になるとは限りません。

2026年度は、安定と変化が同居した象徴的な年です。第1問Aは従来通り70~80字ですが、書き出しの指定が加わりました。第2問Bは単純な独立和文の英訳ではなく、英文中に日本文で示された内容を文脈に合う英語で表現し、さらに空所も補う形になりました。第4問Aは8年連続の正誤問題ながら、文脈から誤りを判断する設問が増えました。第5問の小説も、人物の感情を直接説明せず、行動や描写から推測させる内容でした。

大問1A・要約――「短くする」のではなく、骨格を再構成します

近年は300~400語程度の英文を70~80字の日本語にまとめる形式が中心です。約10分の1以下へ圧縮するため、段落ごとの内容を順番に縮めただけでは字数が足りません。必要なのは、本文を「問題提起―原因」「通説―修正」「現状―理想―方策」などの関係に置き直し、全体を支える骨格だけを残す作業です。

対策では、まず各段落を十数字でメモし、その横に役割を書きます。「主張」「理由」「具体例」「反論」「結論」とラベルを付ければ、具体例や固有名詞を落としやすくなります。次に、本文の中心的な対比や因果を一文にします。最後に70~80字へ調整します。この順を守らず、読んだ直後から答案を書き始めると、後半の重要情報が入らず、書き直しに時間を奪われます。

復習では模範解答の文言を覚えるのではなく、自分の答案で「必要要素の欠落」「具体例の入れ過ぎ」「因果関係の逆転」「曖昧な指示語」のどれが起きたかを分類します。週1~2題を10~12分で解き、第三者に添削してもらうと効果的です。要約は英語の読解と日本語の編集を同時に鍛えられるため、早期に始めるほど得点が安定します。

大問1B・長文論理問題――単語ではなく接続を追います

文補充では、候補文と空所前後に同じ単語があるだけで決めてはいけません。見るべき手掛かりは、代名詞の指示先、冠詞、時制、因果・逆接・追加を示す表現、段落の話題、一般論と具体例の関係です。まず各選択肢に「問題提起」「例」「反論」「結論」など短い役割を書き、明らかな対応から埋めます。最後に余った選択肢を検討すると、ダミーの増減にも対応できます。

語句整序では、意味から闇雲に並べず、動詞、主語、目的語、修飾部の順に骨組みを作ります。動詞の形、名詞の単複、前置詞との結び付き、比較・相関構文を確認すれば、2026年度のように要素数が変わっても揺れません。この大問は選択肢を迷い続けると際限なく時間を使うため、15分程度を上限にして一度離れる判断も必要です。

大問2・英作文――「高度な英文」より、壊れない論理を作ります

自由英作文は2020年度以降、60~80語が定着しています。70語前後であれば、基本構成は「結論1文―理由1文―具体例2文―結論または含意1文」で十分です。ただし、どの問いにも賛成・理由・例を流し込むだけでは不自然になります。「定義せよ」「未来を予測せよ」「二案から選べ」「主張を評価せよ」という課題動詞の違いを先に捉えてください。

本番では、書き始める前の2分で内容を決めます。①問いへの直接回答、②理由、③具体例を日本語または短い英語でメモし、使い慣れた語彙で書きます。難しい単語を一つ入れる利益より、主語と動詞の不一致、冠詞、単複、時制で失点する危険の方が大きいからです。練習時は同じテーマについて賛成・反対の両方を書き、どちらが正しいかではなく、どちらを安全に説明できるか判断する力を鍛えます。

和文英訳では、日本文の表面を一語ずつ英語に移してはいけません。先に「誰が、何を、どう評価しているのか」を平易な日本語へ言い換え、必要なら長い一文を二文に分けます。慣用的な日本語、主語の省略、比喩をそのまま背負わず、意味を保存した簡潔な英文へ組み替えます。2026年度の変更は、この「文脈に合う意味の再表現」が本質であることをはっきり示しています。

・自由英作文の題材は下記の通りです。

年度題材・課題指定語数出題タイプ
20171. 現在試験を受けているキャンパスについて、気づいたことを一つ選んで説明する
2. 余命の短い祖父から「財産を何に使うか、その理由とともに説明できれば遺産を譲る」という手紙を受け取り、孫Junとして返信する
60~80語1. 観察・説明型
2. 手紙・状況対応型
2018シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』の「人は他者を通して自分を知る」という趣旨の対話を読み、思うことを述べる40~60語引用文への応答型
2019新しい祝日を設けるなら、どのような祝日にするか。その意義と望ましいと考える理由を説明する60~80語提案・理由説明型
2020「私たちは言葉を操っているのか。それとも言葉に操られているのか」について意見を述べる60~80語抽象的意見論述型
2021自分にとって暮らしやすい街の最も重要な条件を、理由とともに説明する60~80語条件提示・理由説明型
2022「芸術は社会の役に立つべきだ」という主張について、自分の考えを理由とともに述べる60~80語主張評価・賛否型
202330年後、通勤・通学・旅行などの移動手段がどうなっているかを、理由とともに予測する60~80語未来予測型
2024「紙は人類の最も偉大な発明の一つである」「自転車は人類の最も偉大な発明の一つである」のどちらかを選び、考えと理由を述べる60~80語選択・主張評価型
2025「意見を言わないということは、同意することを意味する」という主張について、考えと理由を述べる60~80語主張評価・賛否型
2026“What does it mean to be strong?”(強いとはどういうことか)に答える60~80語抽象概念の定義型

大問3・リスニング――毎日の聴解と本番運用を分けて鍛えます

リスニングは例年、A~Cの3題、各5問、5択が基本です。講義、インタビュー、ポッドキャストなどが使われ、自然科学から社会・文化まで題材は広範です。2022年度以降は3題が独立する構成が続き、2023年度から対話形式も再び見られます。聞こえた語と選択肢の語が一致するとは限らず、説明を短く言い換えた選択肢を選ばせる点が重要です。

日常学習は、①初見で問題を解く、②スクリプトなしで要旨を再聴する、③スクリプトで未知語・音の連結・弱形を確認する、④音読またはシャドーイング、⑤数日後に再聴、という流れにします。毎日20~30分を確保し、週に一度は長めの素材を途切れず聞きます。短い例文だけの教材では、数分間集中を維持する東大型の負荷を再現できません。

本番では放送前の先読みが得点を左右します。設問の疑問詞、固有名詞、数字、比較対象、NOT問題に印を付け、何を聞くかを決めます。選択肢全文を日本語に訳す必要はありません。放送中は各設問の根拠を一語二語でメモし、一問を聞き逃しても追いかけず次へ移ります。東大リスニングは長く、高度な英文も含むため、後回しにできるおまけではありません。

大問4・文法と和訳――局所知識を文章全体で使います

第4問Aは2019~2026年度に正誤問題が8年連続で出題されました。しかし「文法問題だから本文を読まなくてよい」という発想は危険です。近年は、文法的には成立していても内容上不適切な箇所を見抜かせます。まず動詞の一致・時制・態、代名詞、比較、修飾、語法を点検し、候補が絞れなければ段落の主張と矛盾しないかを確認します。

第4問Bでは、構文を正確に取るだけでなく、省略された内容や指示語の中身を補って訳すことがあります。下線部だけを切り離さず、前後二文を読み、代名詞・抽象名詞・比喩が何を指すかを特定します。訳文は英語の語順を保存する必要はありません。修飾関係と論理関係を壊さない範囲で、日本語として理解できる順へ組み替えます。

大問5・総合読解――物語では「書かれていない感情」を読みます

第5問には小説やエッセイが多く、論説文のように主張が明示されないことがあります。2024年度は歩くことを軸にした経験談、2025年度はラマダーンのエッセイ、2026年度はカーペットの染みにまつわる短編小説でした。語彙レベルが極端に高くなくても、会話、視線、反復、行動の変化から人物関係や心情を推測しなければなりません。

読みながら、人物、出来事、感情の変化を余白に短く記録します。説明問題では、設問が求める「原因」「具体的内容」「心情」を確認し、根拠となる描写を二つ程度集めてから答案化します。自分の感想を混ぜず、本文の言葉を日本語で因果関係に直すのが基本です。選択問題も、選択肢の一部が合っているだけで選ばず、主語・程度・因果・時点の全てを本文と照合します。

120分の時間配分――リスニングによる中断を最初から組み込みます

東大英語では、リスニングが試験開始後およそ45分から約30分間行われるため、自由に使える筆記時間は前半約45分と後半約45分に分断されます。したがって「第1問から順番に解く」と決めるだけでは不十分です。中断時点で長文や英作文が半端にならないよう、前後半の仕事を決めておく必要があります。

一例として、前半に第1問Aを12分、第2問を20分、第4問Aを8分、残り5分でリスニングを先読みします。リスニング後は第4問Bを12分、第5問を22分、第1問Bを11分で処理します。これは絶対解ではありません。長文が得意なら第5問を前半に置いてもよく、要約が遅いなら先に第4問を確保しても構いません。重要なのは、各大問に上限時間を設定し、リスニング開始5分前には必ず先読みへ移ることです。

過去問演習では、初回から120分通しにする必要はありません。最初は大問別に解法を固め、次に前半45分・後半45分を別々に練習し、最後にリスニングを挟む完全形式へ進みます。通し演習後は点数だけでなく、「未着手」「時間超過」「読解ミス」「表現ミス」「知識不足」に失点を分類してください。時間不足は英語力不足とは限らず、設問順や見切りの悪さが原因の場合もあります。

時期別の学習計画――基礎、形式、実戦の順で仕上げます

高2~高3春:語彙・文法・構文を自動化します

単語帳一冊と文法問題集一冊を反復し、基本語の多義、語法、前置詞まで確認します。精読では各文に構造を書き込むだけで終わらず、段落の要点を一文で説明します。同時に週1題の要約、週1題の英作文を始めます。記述は直前期に急には速くならないためです。リスニングは毎日続けます。

高3夏~秋:大問別に制限時間を付けます

要約10~12分、自由英作文10~12分、和文英訳8~10分、和訳1箇所3~4分など、自分の基準時間を作ります。要約と英作文は必ず添削を受け、同じ問題を数日後に書き直します。第1問Bは正解の根拠を接続・照応・段落機能の言葉で説明できるようにします。第5問は物語と論説の両方を扱います。

高3秋~直前期:10年分を「分析素材」として使います

新しい年度から順に消費するのではなく、最初の2~3年分で時間配分を設計し、中盤の年度で修正し、最新3年分を本番模試として残します。一度解いた年度も、要約と英作文を書き直し、リスニングをスクリプトなしで再聴すれば再利用できます。形式が変わった2018年度、抽象題の2020・2022年度、選択式英作文の2024年度、文脈重視が目立つ2026年度は、変化への耐性を試すセットとして特に有効です。

よくある失敗と改善法

第一に、難しい単語帳へ進みすぎる失敗です。東大では基本語の意味と用法、文脈に合う解釈が重要です。語彙学習は、訳語を一つ覚えるだけでなく、例文・語法・類義語まで確認します。

第二に、模範解答を読んで納得して終える失敗です。要約と英作文は、自分で書き直さなければ速度も精度も上がりません。添削後24時間以内に再答案を作り、何を変えたか一行で記録します。

第三に、リスニングを共通テスト対策だけで済ませる失敗です。東大は放送が長く、内容も学術的です。選択肢の先読み、長時間の集中、言い換えの認識を別途訓練します。

第四に、一問へ執着する失敗です。第1問Bの文補充や第4問Aの正誤で確信を求めすぎると、書けば得点になる記述問題が空欄になります。「あとで戻る印」を決め、上限時間で移動する練習が必要です。

まとめ――東大英語は「速く、正確に、形を変える」試験です

2017~2026年度を通して変わらないのは、読む・聞く・書く・訳すという複数技能を、短時間で実用的に運用させる姿勢です。一方、2018年度の和文英訳復活、2024年度の選択式自由英作文、2026年度の文脈内英語表現のように、形式の細部は動きます。したがって、予想した型だけを練習するより、本文の論理と設問要求を捉え、知っている英語で答案を作り切る力を養うべきです。

合格に向けた優先順位は明確です。まず基本語彙・文法・構文を固めます。次に要約と英作文を添削サイクルへ乗せ、リスニングを毎日の習慣にします。その後、大問別の上限時間を作り、最後にリスニングで中断される120分を再現します。過去問は点数を測るだけの材料ではありません。自分がどこで時間を失い、どの変換で誤るかを発見する診断装置です。その使い方を徹底すれば、膨大に見える東大英語も、管理可能な複数の仕事へ分解できます。

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