東京大学(前期日程)の理系数学対策

本記事では東京大学(前期日程)の理系数学対策について記載しています。
試験時間は150分で、配点は120点です。
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各項目の傾向と対策
東京大学の理系数学は、難しい公式をどれだけ知っているかを競う試験ではありません。高校数学の基本事項を使い、見慣れない設定を数式に翻訳し、方針を選び、長い処理を正確に完遂する力が問われます。典型問題の解法を覚えただけでは入口が見えず、入口が見えても計算量や場合分けに押し切られることがあります。
本記事では、2017年度から2026年度までの東京大学理系数学、全60題を分析します。年度別の出題内容を整理し、頻出分野を数値で確認したうえで、分野別の攻略法、答案の作り方、150分の使い方、時期別の学習計画まで解説します。
東京大学の理系数学は、150分で大問6題、120点満点です。単純計算では1題25分ですが、実際の大問には明確な難度差があります。6題を均等に解こうとするのではなく、取る問題、部分点を拾う問題、後回しにする問題を選ぶことが得点の前提になります。
10年分の出題内容を一覧で確認します
各問題の中心的なテーマは次のとおりです。東京大学では複数分野が融合するため、主要な解法や題材を併記しています。
| 年度 | 第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 | 第5問 | 第6問 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2017 | 三角関数・二次関数 | 確率 | 複素数平面 | 漸化式・整数 | 放物線・接線 | 空間図形・体積 |
| 2018 | 微分・増減 | 数列・二項係数 | 平面ベクトル・領域 | 微分の応用 | 複素数平面・軌跡 | 立体の体積 |
| 2019 | 定積分 | 図形の計量・微分 | 空間図形 | 整数の論証 | 微分・数列の極限 | 高次方程式・複素数平面 |
| 2020 | 論証・連立不等式 | 平面図形 | 微分・面積 | 整数・数列 | 通過領域・立体の体積 | 楕円・媒介変数 |
| 2021 | 通過領域 | 複素数平面 | 接線・定積分 | 整数・二項係数 | 微分・増減 | 恒等式・整数 |
| 2022 | 積分方程式 | 漸化式・整数 | 領域 | 微分・定積分・面積 | 立体の体積 | 確率 |
| 2023 | 定積分・区分求積 | 確率 | 放物線・微分 | 空間ベクトル | 整式の除法・論証 | 立体の体積 |
| 2024 | 空間ベクトル・領域 | 定積分 | 確率・漸化式 | 接線・微分 | 回転体の体積 | 整数の論証 |
| 2025 | 軌跡・面積・弧長 | 定積分・極限 | 三角関数・図形計量 | 整数の論証 | 場合の数・漸化式 | 複素数平面 |
| 2026 | 微分・定積分 | 確率・格子点 | 軌跡・領域 | 直線・三角関数・微分 | 複素数平面 | 整数の論証 |
全60題を主分野で分類すると、微分・積分が14題で約23%、図形と方程式・軌跡と領域が11題で約18%、空間図形・立体求積が9題で15%です。上位3分野で34題、全体の約57%を占めます。さらに、空間図形の多くは最終的に積分による体積計算へ進むため、広い意味で微積分が関係する問題は23題、約38%に達します。
その次が整数8題、複素数平面6題、確率・場合の数6題、整式・方程式・論証4題、平面図形・三角関数2題です。ただし、これは一つの問題を主分野に分類した数字です。実際には「空間図形と積分」「確率と漸化式」「整数と数列」「複素数と軌跡」のような融合問題が多く、単元別の暗記だけでは対応できません。
傾向1――数IIIの微積分が試験全体の軸です
微積分は10年間、毎年必ず出題されています。単純な微分・積分計算だけでなく、関数の増減、極限、接線、面積、弧長、積分方程式、区分求積、積分の評価まで形を変えて現れます。2019年度第1問の定積分、2022年度第1問の積分方程式、2023年度第1問の区分求積、2025年度第2問の積分と極限、2026年度第1問の定積分の評価は、その幅の広さを示しています。
近年特に重要なのは、「計算して値を出す」だけでなく「大小を評価する」力です。積分値を直接求めにくいとき、被積分関数を上下から挟む、不等式を積分する、区間を分けて近似する、単調性を使うといった処理が必要になります。極限では、主要項を見抜き、残りの項が無視できることを論証しなければなりません。
対策の第一段階は、標準計算を自動化することです。置換積分、部分積分、有理式、三角関数、指数・対数、絶対値を含む積分を、方針に迷わず処理できるようにします。計算練習では答えだけでなく、定義域、積分区間、符号、置換後の端点まで確認します。
第二段階では、目的別に問題を整理します。①増減と極値、②接線・法線、③面積・体積・弧長、④方程式の解の個数、⑤積分不等式と極限、⑥積分方程式、という分類です。同じ微分公式でも、何を示すために使うのかが違います。「微分できる」状態から、「微分すべき量を自分で選べる」状態へ進むことが必要です。
第三段階では、計算を始める前に見通しを書きます。求めたい量は何か、どの変数で積分するか、境界はどこか、対称性を使えるかを30秒ほどで確認します。重い計算ほど、最初の立式ミスは致命的です。
傾向2――軌跡・領域は「条件の言い換え」が核心です
図形と方程式、軌跡、通過領域は11題あり、東大理系数学の看板分野です。2021年度第1問の通過領域、2022年度第3問の領域、2025年度第1問の軌跡、2026年度第3問の軌跡・通過領域など、動く点や線分が取り得る範囲を決定する問題が繰り返されています。
難しさは、図を描くだけでは境界を確定できないことにあります。点や曲線をパラメータで動かす順像的な見方と、点((x,y))を固定して、その点を通るパラメータが存在するかを調べる逆像的な見方を使い分けます。後者では、パラメータについての方程式が実数解を持つ条件に変換できる場合があります。
たとえば「ある点が曲線上に存在する」は実数解の存在条件、「接する」は重解や判別式、「交点が指定個数ある」は方程式の実数解の個数、「線分が点を通過する」は内分比を表すパラメータが0から1の範囲にあること、といった形へ翻訳します。
領域問題の答案では、境界線を求めただけでは不十分です。境界を含むか、内部と外部のどちらか、すべての点が実際に実現するかを確認します。必要条件を導いたあと、逆にその条件を満たす点に対して元のパラメータを構成できることまで示すと、論証が閉じます。
この分野は複素数平面ともつながります。複素数平面6題の多くも、写像された点の軌跡や存在範囲を調べる問題です。座標平面の軌跡と複素数平面を別々に学ぶのではなく、「変換前の条件が変換後で何を意味するか」という共通の視点で対策すると効率が上がります。
傾向3――空間図形・立体求積は「切ってから積む」が基本です
空間図形・立体求積は9題で、ほぼ毎年見られる重要分野です。2018年度第6問、2020年度第5問、2022年度第5問、2023年度第6問、2024年度第5問などで、通過領域、回転体、空間内の図形の体積が扱われています。
空間問題を頭の中だけで把握しようとすると、条件の漏れや切り口の誤認が起こります。基本方針は、座標軸に垂直な平面で切り、二次元の切り口を求め、その面積を積分することです。切り口が円、円環、扇形、線分の回転など、どの形になるかを正確に決めます。切り口の形が途中で変化する場合には、変化する座標を境に積分区間を分けます。
空間ベクトルでは、図の見た目に頼らず、内積、距離、一次結合で条件を表します。平面や球面上の点について、自由に動ける変数がいくつあるかを確認します。対称性があれば座標設定を簡単にし、回転軸が傾いている場合は、軸に垂直な方向を意識します。
演習では、解説の立体図を眺めるだけでなく、自分で三つの図を描きます。全体図、代表的な切り口、切り口の面積を表すための平面図です。さらに「どの範囲でこの切り口が成立するか」を言葉で説明します。積分計算より前の図形把握に、得点差の大半があります。
傾向4――整数は10年中8年に出題されています
整数は2017、2018、2019、2021、2022、2024、2025、2026年度に出題されました。出なかったのは2020年度と2023年度だけです。二項係数の整除性、最大公約数、素数、約数の個数、漸化式と整数性など、テーマは幅広く、証明問題として出されることが多いです。
整数問題では、いきなり一般証明へ進まず、小さい値を代入して構造を探します。その目的は答えを予想することではなく、余りの周期、素因数の現れ方、不変量、帰納法でつながる形を発見することです。実験から得た予想を、合同式、因数分解、最大公約数、素因数の指数、数学的帰納法などで証明します。
対策では、典型手法を「使う条件」とセットで整理します。割り切れを示すなら合同式や因数分解、互いに素を示すなら差や一次結合、方程式の整数解なら範囲評価と余り、素数が関係するなら積が素数になる条件、約数の個数なら素因数分解です。
答案では、具体例から一般化へ飛ばないようにします。「実験すると成り立つ」ことは証明ではありません。法とする整数を明記し、合同式の両辺に何をしているかを書き、帰納法では初期値・仮定・次段階をそろえます。難しい一般証明が見えなくても、前半小問や必要条件を論理的にまとめれば部分点の可能性があります。
傾向5――確率は空白期間の後、5年連続で出題されています
確率・場合の数は10年間で6題です。2017年度第2問の後、2018年度から2021年度まで4年間出題されませんでしたが、2022年度に復活し、2026年度まで5年連続で出題されています。この推移は、「以前出ていないから今後も出ない」「最近続いたから必ず出る」という予想が危険であることを示します。
東大の確率では、複雑な現象を数えられる状態へ変換する力が必要です。2024年度第3問のような動点、2025年度第5問のような場合の数と漸化式、2026年度第2問のような格子点の選択では、最初から全場合を列挙すると重複や漏れが起こります。
まず、順序を区別するか、同じものを選べるか、全事象が等確率かを確認します。繰り返し操作では、次の状態を決めるために必要な情報だけを残します。位置、偶奇、残数などを状態として定義し、遷移図や漸化式へ落とします。直接数えにくいときは余事象、対称性、条件付き確率を検討します。
確率の漸化式は、式だけを書かず、(p_n)が何を表すか、右辺の各項がどの遷移に対応するかを説明します。数え上げでは、場合分けが互いに排反で全体を尽くすことを示します。この説明が答案の説得力と自分自身の検算を同時に支えます。
傾向6――複素数平面は軌跡問題として学びます
複素数平面は6題で、2017、2018、2019、2021、2025、2026年度に出題されています。絶対値は距離、偏角は向きや角度、積は回転と拡大、商は二つの線分の角度差と比を表します。式変形だけで処理するのではなく、複素数の式を図形的意味へ戻すことが重要です。
対策では、(|z-a|)、(\arg(z-a))、((z-a)/(z-b))が何を表すかを即答できるようにします。そのうえで、回転・拡大、円や直線への写像、軌跡、存在範囲を練習します。偏角では(2\pi)の違い、絶対値では0になる場合、写像では逆像の個数や除外点を確認します。
複素数平面も、最終的には「条件を図形へ翻訳し、逆にその図形上の点が条件を満たすか確かめる」問題です。図形と方程式の対策と統合すれば、学習内容が断片化しません。
東大理系数学の難しさの正体は四つあります
第一は、解法が問題文の表面に出ていないことです。単元名が分かっても、微分する量、固定する点、切断する方向を自分で決めなければなりません。典型問題の記憶は必要ですが、それをそのまま当てはめるのではなく、目の前の条件に合わせて作り直す力が必要です。
第二は、融合です。空間図形が積分へ、整数が数列へ、確率が漸化式へ、複素数が軌跡へつながります。学習初期は単元別で構いませんが、仕上げでは問題の分野名を隠した総合演習が不可欠です。
第三は、処理量です。方針が立っても、計算の途中で符号、定数倍、場合分けを誤ると完答に届きません。東大対策というと発想力ばかり注目されますが、標準計算を速く正確に行う力が、考える時間を生みます。
第四は、問題選択です。6題の難度は均一ではなく、難問にも取りやすい小問が置かれることがあります。大問番号順に進むのではなく、小問単位で得点可能性を見ます。解けない問題があること自体ではなく、そこに長時間を使い続けることが大きな失点になります。
150分の戦い方――3題相当をどう作るか
全問完答を前提にした計画は現実的ではありません。年度差はありますが、まず全体で5割前後、つまり3題分相当を作ることが一つの実戦的な目安です。これは公式な合格基準ではなく、他教科の得点や科類によって必要点は変わります。数学を得点源にしたい受験生や理科三類を目指す受験生は、標準問題を落とさず、6割以上を狙える完成度を目標にするとよいでしょう。
開始後の8~10分で6題を概観します。各題について、分野、最初の一手、小問の独立性、想定計算量を確認し、A「完答候補」、B「前半・部分点候補」、C「後回し」に分けます。得意分野であることより、具体的な式や図が立つことを優先します。
一例として、前半70分でA問題を2題、次の40分で3題目またはB問題の前半、残り30分で部分点回収と見直しに使います。もちろん固定配分ではありません。15~20分考えても使える式や補題が増えない場合は離れます。一方、方針が固まり計算を残すだけなら続けます。「時間を使ったから続ける」のではなく、「答案が完成へ近づいているか」で判断します。
部分点を狙う場合も、思いついた式を羅列してはいけません。文字の定義、成立する条件、求めた中間結果、その結果が次にどう使えるかを書きます。小問が解けなくても、その結論を仮定すれば後の小問へ進める場合があります。問題文の誘導は大問全体の設計図なので、前問の結果が何を可能にしたかを必ず考えます。
記述答案で失点しないための確認事項
東京大学の数学は全問記述式です。最終結果が正しくても、論理の穴があれば安定した得点にはなりません。演習後は次の点を確認します。
- 導入した文字の意味と範囲を書いているか。
- 必要条件だけで終わらず、十分性を確認しているか。
- 場合分けが互いに重ならず、全体を尽くしているか。
- 微分では定義域、増減、端点を確認しているか。
- 積分では区間、符号、図形の上下関係を確認しているか。
- 軌跡・領域では境界を含むか、全点が実現するかを示しているか。
- 確率では全事象が等確率か、重複して数えていないか。
- 整数の証明では例示と一般的な論証を区別しているか。
- 複素数では除外点や偏角の範囲を確認しているか。
- 得た候補を元の条件へ戻しているか。
図は重要ですが、「図より明らか」だけでは根拠になりません。図から得た予想を、座標、内積、単調性、不等式などに変換します。また、長い計算を一行に詰めず、置換、因数分解、場合分けなど方針が変わるところで段落を分けます。採点者が追える答案は、自分も検算しやすい答案です。
時期別の学習計画
春から夏前:全分野の標準事項を完成させます
教科書と標準問題集で、定義・定理・典型処理を固めます。特に数IIIの微積分は毎日計算に触れます。微積分、軌跡・領域、空間図形に演習時間を多く配分しつつ、整数、確率、複素数平面を捨ててはいけません。頻度は学習量の配分に使う数字であり、未習分野を作るための数字ではありません。
正解した問題も、「なぜこの変数を置いたか」「別の方法では何が難しいか」を説明します。解説を読めば理解できる状態と、白紙から入口を再現できる状態は別です。
夏:分野別に東大で使う技術を整理します
微積分なら評価と極限、軌跡なら順像・逆像、空間なら切り口、整数なら実験から証明、確率なら状態と遷移、複素数なら式と図形の往復を重点的に練習します。1題を解いた後、解法を丸写しするのではなく、方針を決めた手掛かりを一文で記録します。
誤答は「知識不足」「方針不明」「場合分け不足」「計算ミス」「答案不足」「時間配分」の六つに分類します。原因が違えば対策も違います。難問を追加する前に、同じ失点を繰り返さない仕組みを作ります。
秋:1題演習から150分演習へ移行します
最初は1題につき30~40分考え、方針を立てる力を養います。次に3題を75分で解き、選択と撤退を練習します。最後に6題150分の年度別演習へ進みます。初めから時間だけを厳しくすると、考えるべき良問をすぐ解説で済ませる癖がつくため、段階を分けます。
年度別演習では、得点だけでなく、最初の10分の選択が適切だったかを評価します。終了後に無制限でもう一度考え、解説を読んで答案を書き直し、1~2週間後に入口を再現します。過去問は採点して終わる模試ではなく、判断力を修正する教材です。
共通テスト後:完成度と再現性を優先します
新しい難問集を広げるより、過去問と模試の誤答を戻します。頻出テーマから数題ずつ選び、最初の10分で方針だけを書く訓練も効果的です。積分計算、軌跡の存在条件、空間の切り口、合同式、確率漸化式を短時間で再確認します。
自分の計算ミスの一覧も作ります。符号、係数、積分区間、端点、平方後の余分な解、場合の重複など、ミスには個人差があります。終了前の見直しは全答案を漫然と読むのではなく、この一覧に沿って行います。
まとめ――微積分を軸に、図形化と論証力を鍛えます
2017年度から2026年度までの60題を見ると、東大理系数学は数IIIの微積分を中心に、軌跡・領域、空間図形・立体求積が大きな柱になっています。上位3分野で約57%、空間求積を含む広義の微積分問題は約38%です。整数は10年中8年、確率は直近5年連続、複素数平面は10年で6題出ており、どの分野にも基本的な対応力が必要です。
対策の核心は三つです。第一に、標準計算を速く正確に行えるようにします。第二に、条件を方程式、領域、切り口、状態遷移へ翻訳する練習をします。第三に、150分の中で解ける大問と小問を見極め、論理的に閉じた答案を積み上げます。
過去問の価値は、次年度の出題を予想することだけにはありません。東大がどのように基本事項を組み替えるかを知り、自分がどこで方針を失い、どこで計算を崩し、どこで時間を使いすぎるかを発見することにあります。各年度を解いた後、「何を知っていれば解けたか」ではなく、「どの条件に注目すれば、その知識を選べたか」まで振り返ってください。その積み重ねが、初見の6題から取るべき3題相当を見つける力につながります。

