東京大学(前期日程)の国語対策

本記事では東京大学(前期日程)の国語対策について記載しています。

試験時間と得点は文系が150分・120点、理系が100分・80点です。

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各項目の傾向と対策

「東大国語は、文章が難しすぎて対策しにくい」。そう感じる受験生は多いでしょう。
しかし、2017年度から2026年度までの10年分を並べてみると、出題の骨格は驚くほど安定しています。
文章の題材は科学論、歴史哲学、文化人類学、身体論、精神分析など幅広いものの、東大が受験生に求める作業は一貫しています。
それは、本文の論理や場面を正確に読み、設問が要求する範囲を見極め、限られた解答欄に過不足なく言い換えることです。

本記事では、添付された2017〜2026年度の文科問題10年分を実際に確認し、出典、設問形式、読解で必要な操作を横断的に分析しました。なお、文科は150分・120点で四題、理科は100分・80点で三題です。第一問の評論、第二問の古文、第三問の漢文は文理共通の文章で、文科のみ第四問の現代文が加わります。大問別の配点は公表されていないため、予備校などの推定配点は参考にとどめましょう。

10年分の出典から見える全体像

年度第一問・評論第二問・古文第三問・漢文第四問・文科現代文
2017伊藤徹『芸術家たちの精神史』『源氏物語』「真木柱」劉元卿『賢奕編』幸田文「藤」
2018野家啓一『歴史を哲学する』『太平記』王安石「上仁宗皇帝言事書」串田孫一「動物との対話」
2019中屋敷均「科学と非科学のはざまで」『誹諧世説』黄宗羲『明夷待訪録』是枝裕和「ヌガー」
2020小坂井敏晶『神の亡霊』『春日権現験記』『漢書』谷川俊太郎「発語の根はどこにあるのか」
2021松嶋健「ケアと共同性」『落窪物語』井上金峨『霞城講義』夏目漱石「子規の画」
2022鵜飼哲「ナショナリズム、その〈彼方〉への隘路」『浜松中納言物語』『呂氏春秋』武満徹「影絵(ワヤン・クリット)の鏡」
2023吉田憲司「仮面と身体」『沙石集』『貞観政要』長田弘『詩人であること』
2024小川さやか「時間を与えあう」『讃岐典侍日記』方東樹『書林揚觶』菅原百合絵「クレリエール」
2025田中彰吾『身体と魂の思想史』『撰集抄』雲棲袾宏『竹窓二筆』佐多稲子「狭い庭」
2026松本卓也『斜め論 空間の病理学』『狭衣物語』白居易「双石」仲谷実織「宿雨のあとで」

一覧からまず分かるのは、ジャンルの「予想」はあまり有効ではないということです。
第一問だけ見ても、テクノロジーと倫理、歴史認識、生命科学、能力主義、ケア、ナショナリズム、仮面、負債、鏡像認知、精神分析へと題材は移っています。
一方で、その多くは「常識的に一つだと思われているものを分解する」「二つの原理を対比する」「具体例から抽象的な仕組みを導く」という構造を持っています。
背景知識を当てにするより、対比・因果・具体と抽象の往復を可視化する力が重要です。

古文は物語、説話、日記、軍記、俳諧逸話と幅が広くなっています。『源氏物語』『落窪物語』『浜松中納言物語』『狭衣物語』のような作り物語では、人物関係、敬語の方向、和歌の贈答が中心になります。
『沙石集』『撰集抄』『春日権現験記』のような説話系では、行動の因果や人物評価をつかむ必要があります。漢文は思想・政治論、史伝、説話が主流ですが、2026年度には2016年度以来となる漢詩が出題されました。
出典の種類は変わっても、語法を正確に訳し、比喩や具体例を一般化し、筆者の判断を説明するという要求は変わりません。

年度別に見る「難しさの場所」の移動

形式は安定していますが、毎年同じ難しさではありません。
2017年度の評論はテクノロジーと価値判断という抽象的なテーマを扱い、2018年度は直接知覚できない対象の実在をどう保証するかという科学・歴史哲学の類比を追わせました。
2019年度は生命科学の文章で論旨は比較的見通しやすい一方、短い傍線部を十分に補足して答案化する必要がありました。
つまり、この時期からすでに「文章が読めること」と「採点可能な説明を書くこと」は別の力として問われています。

2020年度は能力主義と自己責任、2021年度は国家の論理とケア、2022年度はナショナリズムと排除が題材となり、社会の制度が個人をどう位置づけるかが続けて問われました。
対立する概念を整理しないまま、筆者の結論だけを抜き出すと答案の因果が切れてしまいます。
2023年度以降は、仮面、掛け売り、鏡像、治療空間という具体的な事例や装置から、人間の自己認識や関係の原理を導く文章が並んでいます。見た目は読みやすくても、具体例の紹介で終わらず、その例が何を証明するかまで書かなければ得点になりません。

セット全体の難度も大問間で移動します。2023年度は古文・漢文の筋が追いやすく、そこで時間を節約して現代文の精度を高めたい年でした。2024年度は古文本文の把握が難しく、基礎知識を使って部分点を確保する姿勢が必要でした。
2025年度は基本的な設問と着地点の難しい設問の差が大きく、文系第四問の小説化も加わりました。
2026年度は分量がやや増え、漢文が漢詩に変わったものの、各文章自体の筋は追いやすくなっています。変化に動揺せず、「取れる設問を先に確定し、難問には根拠を残す」という試験運用が重要になります。

第一問・評論

10年間で最も安定しているのが第一問です。
基本構成は、二行程度の説明問題が三問、本文全体を踏まえる100〜120字の問題が一問、漢字の書き取りが一問です。2019年度は(一)〜(四)がすべて「どういうことか」という内容説明でしたが、年度によって理由説明も混ざります。とはいえ、問われる操作は次の四つに整理できます。

第一は「傍線部の省略を補う」ことです。東大の傍線部は短く、抽象的な表現や指示語だけが示されることが多くあります。傍線部の言葉をそのまま繰り返しても説明にはなりません。「誰が」「何と比べて」「何を」「なぜ」「どうする」のうち、隠れている要素を本文から回収する必要があります。

第二は「対比を両側から書く」ことです。2021年度は国家・管理・私的自由の論理とケアの論理、2025年度は体性感覚と鏡に映る視覚像、2026年度は垂直的関係と水平的関係が軸になりました。片側だけを書けば、意味は通っても答案としては不十分になります。「Aでは〜ですが、Bでは〜」という骨格を先に作ると、必要な要素を落としにくくなります。

第三は「具体例を一段抽象化する」ことです。2024年度のタンザニアの掛け売りは、客が代金を後払いするという事実だけをまとめる問題ではありません。市場経済上の取引の内側に、時間の猶予と返礼による信頼関係が成立する仕組みを説明する必要があります。具体例の固有名詞や細部を残しすぎると字数が足りず、削りすぎると根拠を失います。具体的事実を「どんな関係・原理の例か」に変換するのが東大現代文の中心作業です。

第四は「最終問題で本文を再構成する」ことです。100〜120字問題は単なる全文要約ではありません。設問の傍線部を説明するために、前半で示された問題設定と後半で到達した結論を接続する問題です。2017年度ならテクノロジーの自己展開と人間に迫られる価値判断、2020年度なら近代が掲げる機会平等と格差の再生産、2023年度なら仮面による異界・自己の可視化を、一つの因果の鎖に組み直します。各小問の答えを寄せ集めるのではなく、「背景→仕組み→帰結」の三層で設計するとよいでしょう。

対策では、本文を読んだ直後に要旨を書くより、まず各段落を「問題提起」「具体例」「対比」「反論」「結論」など一語で分類します。そのうえで、傍線部ごとに根拠範囲を線で囲み、解答要素を箇条書きにします。答案は、①設問語を具体化する主語、②核心となる対比または因果、③傍線部に着地する結論、の順に組み立てます。書いた後は「本文にない評価を足していないか」「傍線部の言い換えだけで終わっていないか」「対比の片側が欠けていないか」を確認しましょう。

第二問・古文

古文では、複数箇所の現代語訳と、理由・心情・発言内容などの説明問題が組み合わされます。文科は理科より設問が多い傾向にありますが、どちらも一行程度の狭い欄にまとめる点は同じです。

10年分を通して差がつくのは、難単語の知識よりも主語判定です。会話文の多い2021年度『落窪物語』、心中描写が中心の2022年度『浜松中納言物語』、夢の中の和歌のやり取りを読む2026年度『狭衣物語』では、誰の発言・行動・感情かを外すと、その後の設問を連続して失います。読み始める前にリード文を使って人物表を作り、本文中では敬語、会話の開始と終了、接続助詞、係助詞を手掛かりに主語を更新するべきです。

現代語訳では、単語と文法を採点要素に分解します。たとえば一つの傍線に、重要単語、助動詞、敬語、反語、係り結びが含まれるなら、それぞれを落とさず、最後に自然な日本語へ整えます。先に意訳すると、助動詞の意味や敬意の方向が消えやすくなります。逆に逐語訳の語順を残しすぎると、日本語として意味が通りません。直訳で要素を確保してから意訳する二段階が安全です。

和歌は「現代語訳して終わり」ではありません。誰から誰へ、直前の何を受けて詠まれ、掛詞・縁語・比喩によってどんな心情や意図を伝えたかまで読みます。2018年度『太平記』の男女の和歌、2022年度の別れ、2026年度の夢枕の場面はいずれも、散文部分との接続が得点源になります。古典常識も、単独の暗記項目ではなく、出家、死後、夢、婚姻、身分、宮仕えなどが人物の判断をどう制約するかという形で使えるようにしましょう。

第三問・漢文

漢文は文章量が比較的短いものの、短時間で高精度の処理が求められます。2017〜2025年度は、最初の設問で三箇所程度の現代語訳を求め、その後に内容説明や全体趣旨を問う形が安定していました。2026年度は白居易の五言古詩「双石」に変化しましたが、主語・目的語を補って訳すこと、作者の評価を文脈から説明することは共通しています。

対策の第一は、句形を「見たことがある」状態から「一瞬で訳語が出る」状態にすることです。否定、反語、疑問、使役、受身、比較、限定、累加、仮定を、白文に近い形でも処理できるようにします。第二は多義語を文脈で決めることです。2018年度のように否定・反語が絡む文章や、2022年度の「威」のように意味の幅がある語では、単語帳の第一義を機械的に当てはめると論旨が崩れます。

第三は、寓話や歴史的具体例を一般命題へ直す練習です。2022年度『呂氏春秋』では馬の制御や塩加減の比喩から政治における威と愛の均衡を読み、2025年度『竹窓二筆』でも具体例から筆者の戒めを抽象化する必要がありました。答案を書く前に「この人物・物の対応先は何か」「筆者が肯定しているのはどちらか」を余白に記すだけで、方向違いを防げます。

第四問・文科現代文

2017〜2024年度の第四問は、自然、動物、食、言葉、絵、音楽、詩などをめぐる随筆・随想が続きました。第一問ほど論理標識が明瞭ではなく、比喩、感覚、場面の移動を根拠に、筆者の認識の変化を説明させます。ここでは「美しい」「感動した」などの印象語に逃げず、何を見聞きした結果、対象の捉え方がどう変化したかを叙述に即して書く必要があります。

大きな変化は、2025年度の佐多稲子「狭い庭」で、現行の四題構成になってから初めて小説が出題されたことです。2026年度も仲谷実織「宿雨のあとで」が続き、小説は一時的な例外ではなく、今後も備えるべき選択肢になりました。ただし、対策の本質が「登場人物に共感すること」へ変わったわけではありません。表情、動作、発言、風景、前後の状況を根拠に、人物の葛藤や関係の変化を説明する点では、従来の随筆と同じく客観的な記述力が問われます。

第四問は、本文の言葉だけを集めても答案の着地点が見えにくい問題です。そこで、傍線部の前後を「状況」「刺激となった出来事」「人物の受け止め」「行動または認識の変化」に分けます。比喩表現は、その場面で何と何が重ねられているかを特定し、抽象語に翻訳します。本文から離れた人生論を語らず、根拠となる叙述を二つ以上つないで答えることが重要です。

10年分析から導く、実戦的な解答手順

東大国語の答案は、いきなり文章にしてはいけません。
まず設問を「内容説明」「理由説明」「心情説明」「現代語訳」「全体趣旨」に分類します。
次に、内容説明なら言い換える対象と対比項、理由説明なら原因と成立過程、心情説明なら置かれた状況と評価、現代語訳なら語彙・文法・省略語を拾います。

その後、根拠候補を三〜五個の短いメモにし、重複を消して因果順に並べます。二行答案なら、目安は六十〜七十字程度ですが、実際には答案用紙の幅と自分の字の大きさで調整します。
100〜120字問題では、最初から120字の一文を書こうとせず、①前提、②対比・転換、③結論の三文で下書きし、接続を整えて一〜二文に圧縮します。

推敲では内容の追加より、関係の明確化を優先します。「それ」「このこと」を減らし、何を指すかを書きます。並列と因果を混同せず、「〜ため」「〜ことで」「〜のに」を使い分けます。主語と述語が対応しているか、設問末尾の「なぜか」に「〜から」、「どういうことか」に「〜ということ」で答えているかも確認しましょう。東大国語では、知っていることを多く書く人より、必要なことだけを誤解なく書ける人が強いのです。

時間配分と過去問の使い方

文科150分なら、第一問50分、古文30分、漢文25分、第四問35分、見直し10分を出発点にするとよいでしょう。
理科100分なら、第一問45分、古文25分、漢文25分、見直し5分が一案です。ただし、順番は固定する必要はありません。古典が安定している人は古文・漢文を先に処理し、残り時間を第一問に投じる戦略も有効です。重要なのは、年度ごとに難度が動く一題へ時間を吸われないことです。易しい設問を確実に取り、難問でも根拠を一つは示して部分点を狙いましょう。

10年分は、最初から年度順に消費しないほうが効果的です。
まず2019・2021・2023年度で標準的な第一問の型を学び、2020・2022年度で社会思想系の対比と因果、2024・2025年度で具体例の抽象化、2026年度で複数対比の統合を練習します。
古文は2019・2023年度の比較的追いやすい文章から始め、2021・2022・2024・2026年度で人物関係と和歌を鍛えます。
漢文は説話・史伝・思想文を一通り経験した後、最後に2026年度の漢詩で形式変化への対応力を確認します。

復習では模範解答を写すだけでは伸びません。自分の答案と模範解答を「解答要素」単位で比較し、①根拠を読めなかった、②設問要求を外した、③要素は拾ったが表現できなかった、④時間不足、のどれかに分類します。
同じ問題を三日後に解き直し、さらに二〜三週間後に字数を測って再答案化します。採点者や指導者に見てもらえるなら、点数より「何が書かれていないため減点されたのか」を聞くと改善につながります。

ありがちな失敗と修正法

第一の失敗は、本文の表現を切り貼りして安心することです。引用した語同士の関係が示されなければ、採点者には理解の筋道が伝わりません。抜き出した語句の間に「なぜなら」「その結果」「対して」のどれが入るかを考え、関係まで自分の言葉で示しましょう。

第二は、解答欄を埋めるために説明範囲を広げすぎることです。傍線部の前後に情報が多くても、設問が聞いているのが理由なら結果の詳細は不要です。答案作成前に設問末尾へ丸を付け、要求語を固定します。第三は、古典で分からない一語に止まり続けることです。人物、場面、肯定・否定、因果が取れれば説明問題の部分点は狙えます。空欄にせず、確実な情報から答案を作りましょう。

第四は、模範解答と表現が違うだけで誤答だと思うことです。記述式では同義の言い換えが成立します。比較すべきなのは語句の一致率ではなく、主語、対比、理由、結論という採点要素です。反対に、きれいな文章でも核心要素が欠けていれば得点は伸びません。復習ノートには模範解答全文ではなく、「自分が落とした要素」と「次にそれを見つける目印」を一行ずつ残すと、別の年度へ学びが転移します。

まとめ――東大国語は「圧縮された説明」の試験である

2017〜2026年度の10年分から見える最大の傾向は、形式の安定と題材の多様性です。出典を予想することは難しいものの、必要な力は予測できます。評論では対比・因果・具体と抽象を整理し、古文では人物関係と敬語を固定し、漢文では句形を土台に比喩を一般化し、文系第四問では感覚的な叙述や心情を客観的な根拠から説明します。そして全分野で、狭い欄に情報を圧縮します。

したがって、対策の中心は読書量だけでも知識暗記だけでもありません。「根拠を特定する→要素に分ける→関係を組み直す→字数内で書く→不足を添削する」という反復です。東大国語は、独創的な感想を競う試験ではありません。未知の文章を前にしても、他者の論理や心情を正確に受け取り、限られた言葉で第三者に伝え直せるかを測る試験です。この作業を10年分で徹底すれば、国語は不安定な科目ではなく、再現性のある得点源に変わります。

旧帝大対策のまとめはこちらです!↓

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