東京大学(前期日程)の日本史対策

本記事では東京大学(前期日程)の日本史対策について記載しています。
試験時間は社会2科目で150分で、配点は2科目で120点です。
東京大学(前期日程)の入試情報
東京大学の公式サイトの情報をご確認ください。
各項目の傾向と対策
東京大学の日本史は、用語を大量に暗記すれば解ける試験ではありません。複数の提示文や図表から情報を取り出し、教科書で学んだ知識と結びつけ、設問が指定した観点に沿って短い論述にまとめる力が問われます。知識があっても、問いの中心から外れれば点になりません。反対に、提示文を要約するだけでも、歴史的な位置づけや因果関係が不足します。
本記事では、2017年度から2026年度までの東京大学日本史40題を分析し、年度別テーマ、時代・分野の傾向、史料の使い方、論述答案の作り方、地歴2科目150分の時間配分、時期別の勉強法を解説します。前提として、東大日本史は大問4題で、基本構成は第1問が古代、第2問が中世、第3問が近世、第4問が近・現代です。論述総字数は例年650字前後で、2026年度は7問・630字でした。
10年分の出題テーマ一覧
まず、40題の中心テーマを年度別に整理します。
| 年度 | 第1問・古代 | 第2問・中世 | 第3問・近世 | 第4問・近現代 |
|---|---|---|---|---|
| 2017 | 律令国家と東北支配 | 六波羅探題・鎮西探題の裁判 | 百姓の家の相続と女性の地位 | 大正~昭和初期の陸海軍と政党政治 |
| 2018 | 藤原京の特徴 | 室町幕府の財政と徳政令 | 異国船打払令 | 内地雑居、憲法制定と教育理念 |
| 2019 | 摂関政治期の年中行事と日記 | 承久の乱後の朝幕関係 | 輸入代替化と国内生産 | 第一次世界大戦期と1950年代前半の経済 |
| 2020 | 文字を書くこととその普及 | 戦国期京都の町の自治 | 江戸時代の暦の作成 | 明治前期の軍隊と政治・社会 |
| 2021 | 9世紀後半の国政運営 | 鎌倉時代の荘園制 | 綱吉期の富士山噴火と復興 | 貴族院と第二次護憲運動 |
| 2022 | 律令制下の命令伝達 | 朝廷の経済基盤の変化 | 徳川綱吉の政治と背景 | 明治中後期から昭和初期の経済発展 |
| 2023 | 国家による造営工事の変化 | 家督継承の変化と応仁・文明の乱 | 天保期の江戸の都市政策 | 1950年代の対外関係と政党間対立 |
| 2024 | 9世紀前半の政治体制の転換 | 東大寺再建と鎌倉幕府 | 鎖国政策と沿岸防備 | 明治~昭和戦前期の小作農 |
| 2025 | 7~8世紀の中国文化受容の変化 | 室町幕府の土一揆への対応 | 東海道整備と大名の参勤 | 近代初等教育の音楽教育 |
| 2026 | 律令制下の女官とその変化 | 御成敗式目と分国法 | 江戸時代の山村の特徴 | 戦中・高度成長期の男女の働き方 |
時代配分は極めて安定しています。10年間の40題は、古代10題、中世10題、近世10題、近現代10題です。したがって、「近世が苦手なので捨てる」といった戦略は成立しません。毎年、全時代から1題ずつ出ることを前提に通史を完成させる必要があります。
しかし、時代が固定されているからといって、テーマを予想しやすいわけではありません。政治制度や対外関係に加え、文字、暦、災害復興、交通、村落、教育、音楽、女性労働など、教科書の章タイトルにはなりにくい題材が出ています。東大が見ているのは、特定テーマを知っていたかではなく、基本知識を新しい角度から組み直せるかどうかです。
傾向1――全時代均等ですが、頻出する「歴史の見方」があります
個別の題材は多様でも、問い方には共通点があります。特に多いのが、制度の成立と変質、政治権力と社会の関係、経済基盤、地域支配、対外関係、身分や労働の変化です。
古代では、律令国家の仕組みとその変化が中心です。2017年度の東北支配、2021年度の国政運営、2022年度の命令伝達、2026年度の女官は題材こそ違いますが、「律令制が実際にどう運用され、時代とともにどう変わったか」を問う点でつながっています。官職名や法令名だけでなく、中央と地方、天皇と太政官、官人と政治権力の関係を構造的に理解する必要があります。
中世では、幕府・朝廷・寺社・在地社会という複数の権力の関係が頻出します。承久の乱後の朝幕関係、荘園制、東大寺再建、御成敗式目と分国法などは、幕府だけを主語にしても説明できません。土地支配、裁判権、財政、法の適用範囲を整理し、「誰が誰に対して、何を根拠に権限を行使したか」を把握します。
近世では、幕藩体制のもとで社会と経済がどう動いたかが問われます。輸入代替化、都市自治、暦、災害復興、沿岸防備、交通、山村経済など、政治史と社会経済史を分離できない問題が並びます。幕府の政策名を答えるだけでなく、政策が村・町・大名・商人・百姓に与えた影響まで説明できるようにします。
近現代では、政治・軍事・外交に加え、経済、農村、教育、労働、ジェンダーが目立ちます。2023年度は1950年代の対外関係と政党間対立、2024年度は小作農、2025年度は音楽教育、2026年度は女性の働き方でした。戦後史まで含め、社会の変化を政治制度や経済状況と結びつける力が必要です。
傾向2――「変化」「背景」「関係」を説明させます
東大日本史の設問では、「どのように変化したか」「なぜそうなったか」「両者はどのような関係にあったか」「どのような特徴があるか」といった要求が繰り返されます。単一の出来事を説明するより、複数の時点や主体を比較し、因果関係を示す問題が中心です。
変化を問われた場合は、変化後だけを書いてはいけません。「当初はAであったが、Bを背景にCへ変化した」という三段構成が基本です。背景を問われたら、直前の事件を一つ挙げるだけでなく、政治的・経済的・社会的条件のうち、提示文と結びつくものを選びます。関係を問われたら、二つの制度や主体を別々に説明せず、継承・対立・補完・従属・相互依存など、関係を表す述語を置きます。
たとえば2026年度第2問は、御成敗式目と分国法の関係が主題です。両者の内容を並べるだけでは足りず、分国法が御成敗式目を踏襲しつつ、地域の実情に応じて独自規定を設けたことを示す必要があります。このように、設問中の「関係」「変化」「背景」は答案の構造を指定する言葉です。
問題を読んだら、最初に要求語を四角で囲みます。次に、時期、対象、比較軸、使用を求められた資料や条件を確認します。知っていることを書く前に、「何を説明すれば答えになるか」を一文で言い換える習慣をつけると、論点のずれが減ります。
傾向3――提示文はヒントではなく、答案の材料です
東大日本史では、複数の提示文が毎年与えられます。年度によっては、法令、日記、統計グラフ、系図、地図、図版なども使われます。2022年度第4問、2023年度第4問、2024年度第4問、2026年度第4問では、数量的な変化を読み取る図表が含まれました。
提示文は、知識問題を難しく見せる飾りではありません。教科書に直接は載っていない視点を与え、答案に必要な事実を示す中心資料です。2026年度は全大問が提示文型で、知識量だけよりも、資料を使い切って設問に沿う答案を作れるかが差になりました。
読み取りでは、各資料の要約を長く書く必要はありません。余白に「主体」「行為・状態」「時期」「変化・対比」を短くメモします。資料(1)が制度の原則、資料(2)が例外、資料(3)が変化の背景を示すなら、その役割を区別します。複数資料が同じことを示す場合は共通点をまとめ、異なる場合は時間差や立場の違いを疑います。
また、資料中の表現をそのまま写すだけでは論述になりません。具体例を教科書的な概念へ上げる作業が必要です。年貢米以外の商品生産や出稼ぎが書かれていれば貨幣経済の浸透へ、男性労働力の不足と復員が書かれていれば戦時動員と戦後の雇用変化へ結びつけます。この「資料の具体」と「教科書の概念」の往復が東大日本史の核心です。
傾向4――教科書知識は必要ですが、細かい用語暗記が中心ではありません
「資料を読めば解ける」と考えるのも危険です。提示文は方向を示しますが、その情報を歴史的に位置づけるには知識が必要です。御成敗式目と分国法、摂関政治と院政、鎖国政策と海防、戦時経済と戦後復興など、制度や時代の基本構造を知らなければ、資料の重要性を判断できません。
一方、私大の細かい語句問題のために覚えるような事項を際限なく増やしても、東大の得点には直結しにくいです。優先すべきなのは、教科書本文に書かれた因果関係、制度の目的と実態、変化の前後、複数主体の利害です。
教科書を読む際は、固有名詞に線を引くだけでなく、接続語に注目します。「そのため」「しかし」「一方」「これを背景に」の後には、論述で使える因果や対比があります。一つの節を読んだら、「誰が」「何を目的に」「どのような制度を作り」「社会がどう変化したか」を100字程度で説明します。
用語集は、未知語を増やすためではなく、教科書の記述を正確にするために使います。答案に入れたい語の定義や時期が曖昧なときに確認し、似た制度との違いを整理します。
傾向5――文化史・社会史も政治や制度と結びついて出ます
2020年度の文字普及、2025年度の音楽教育、2026年度の女官や女性労働を見ると、文化史やジェンダー史も無視できません。ただし、作品名や人物名だけを問う文化史ではありません。文化の受容・普及を可能にした政治体制、教育制度、国際関係、社会階層の変化を説明させます。
2018年度第4問の教育理念、2019年度第1問の日記、2025年度第1問の中国文化受容も同様です。文化史を学ぶときは、作品・宗教・教育を、担い手、受容層、伝達手段、政治権力との関係という四つの観点で整理します。社会史では、家、村、都市、労働を、法制度や市場経済の変化と結びつけます。
この傾向は、未見の題材への対策にもなります。題材を知らなくても、「誰が担ったか」「何が変化を促したか」「国家や社会とどう関係したか」という問いを立てれば、提示文を整理しやすくなります。
東大日本史の難しさの正体
第一の難しさは、知識と資料の配分です。知識だけで書くと資料が示す独自の論点を逃し、資料だけで書くと歴史用語と因果関係が不足します。答案の各要素について、「資料から得た事実」と「知識で補う位置づけ」を区別する必要があります。
第二は、設問の制約です。同じ資料でも、「特徴」「背景」「変化」「影響」のどれを聞かれるかで答案は変わります。さらに、特定の時期、主体、資料を踏まえることなどが指定されます。一つでも無視すると、歴史的に正しい文章でも得点しにくくなります。
第三は、短い字数です。東大では30字程度の短答型論述から150~180字程度の論述まで出ます。短い答案ほど、主語や比較軸を省きすぎる危険があります。長い答案では、情報を詰め込むうちに問いへの結論がぼやけます。
第四は、地歴2科目を150分で解く時間制約です。日本史だけに十分な時間を使えるわけではありません。資料を丁寧に読みつつ、答案構成に迷い続けない処理手順が必要です。
論述答案を作る五つの手順
1.設問を分解します
時期、対象、要求語、条件、字数を確認します。「何がどう変化したのか」「何と何の関係か」を一文で言い換えます。資料を読む前に問いの枠を作ることで、必要な情報を選びやすくなります。
2.提示文ごとに役割をメモします
資料を「原則」「具体例」「背景」「変化後」「反対例」などに分類します。文章を丸ごと要約するのではなく、設問に使う要素だけを抜き出します。図表では数値をすべて写さず、増加・減少、時期差、階層差、男女差などの傾向を言葉にします。
3.教科書知識を補います
資料に直接書かれていない制度名、背景、結果を加えます。ただし、知っている事項を無制限に足してはいけません。設問に答えるために必要か、資料と論理的につながるかを基準に選びます。
4.答案の骨組みを作ります
いきなり清書せず、結論と要素の順番を決めます。変化なら「以前→背景→以後」、原因なら「状況→政策・行動→結果」、比較なら「共通点→相違点→理由」という型が使えます。型は内容を作るものではなく、情報を並べるための器です。
5.字数を調整して検算します
指定字数の9割以上を一つの目安にしつつ、無理な水増しはしません。主語があるか、因果が逆転していないか、時期がずれていないか、要求語に答えた述語があるかを確認します。最後に、指定された資料や条件をすべて使ったかを見直します。
字数別の書き方
30~60字では、結論を先に置き、理由または対比を一つ加えます。背景説明を何個も詰め込むより、設問の中心を外さないことが重要です。主語を省略しすぎず、一文で完結させます。
90~120字では、二~三要素を因果でつなぎます。単なる箇条書きにならないよう、「ため」「一方」「その結果」などの接続関係を明確にします。複数資料の情報を一つの論理へ統合する字数です。
150~180字では、変化の前後、背景、結果まで書けます。ただし、導入を長くする余裕はありません。最初の一文で対象と結論を示し、中央で理由や具体的内容、最後に変化や意義をまとめます。
地歴2科目150分の時間配分
日本史に使う時間は、もう一方の選択科目との得意不得意によりますが、70~75分程度を基準に調整するとよいでしょう。重要なのは、過去問演習の段階から2科目セットで配分を試すことです。
日本史を75分で解くなら、最初の3~5分で4題を確認し、1題あたり15~17分程度で資料読解、構成、記述を進め、最後に5分ほど見直します。必ず第1問から解く必要はありません。資料が短く要求が明確な問題や、知識の土台がある問題から始める方法もあります。
一つの論述に迷ったときは、空欄のまま止まらず、必要要素を箇条書きにして次へ進みます。全4題に答案を残した後で戻るほうが、総得点は安定します。ただし、字数を埋めるための曖昧な文章は避けます。確実な結論、資料から読める事実、基本知識を優先します。
時期別の対策
春から夏:通史と教科書の因果関係を固めます
高3の夏までに、戦後史を含む通史を一周します。第4問は近現代知識の比重が高くなりやすいため、現代史が未習のまま秋を迎えると不利です。各時代で、政治制度、土地・税、対外関係、社会経済、文化を横断して整理します。
この段階から短い論述を週に1~2題書きます。最初は教科書を参照して構いません。模範解答の暗記ではなく、教科書のどの記述が答案のどの部分に使われたかを確認します。
夏から秋:頻出論点を縦と横に整理します
律令制、荘園公領制、鎌倉・室町幕府、幕藩体制、近代国家形成、産業化、政党政治、戦時体制、戦後改革を重点的に復習します。制度を一時点で覚えるのではなく、成立、運用、変質、次の制度への移行を線で結びます。
同時に、女性、教育、災害、交通、都市、労働などのテーマ史も教科書の索引を使って時代横断で確認します。テーマ史は新しい知識を大量に足す作業ではなく、通史の知識を別の軸で並べ直す作業です。
秋以降:過去問で東大型の読み方を身につけます
最初は大問単位で時間をかけ、設問分析と資料の使い方を学びます。次に4題を75分程度で解き、最後に地歴2科目150分で実戦演習をします。
復習では模範解答との差を、「知識不足」「資料の見落とし」「設問の読み違い」「因果不足」「字数調整」の五つに分類します。模範解答を丸ごと写すだけでは、次の問題への改善点が見えません。不足した要素が教科書のどこにあるかを戻って確認し、自分の答案を同じ字数で書き直します。
添削を受けられる場合は、点数だけでなく、設問要求を満たしているか、資料と知識の対応が正しいか、因果が伝わるかを見てもらいます。自分で採点すると、知っている意図を答案にも書いたつもりになりやすいため、第三者の確認が有効です。
直前期の確認
直前期は新しい細目知識を増やすより、40題から見えた基本構造を再確認します。古代は律令制の運用と変質、中世は権力と土地支配、近世は幕藩体制と社会経済、近現代は政治・経済・外交・社会の連動を説明できるようにします。
各年度の問題を見て、設問の要求を30秒で言い換え、資料ごとの役割を3分程度でメモする練習も効果的です。答案全文を書く日と構成だけ作る日を分ければ、多くの問題を復習できます。
最後に、自分の失点パターンを一覧にします。主語不足、前後比較の片側欠落、資料の未使用、知識の盛り込みすぎ、時期のずれ、字数超過などです。本番の見直しでは、その項目を優先します。
まとめ――「知っている歴史」を「説明できる歴史」に変えます
2017年度から2026年度までの東大日本史は、古代・中世・近世・近現代から毎年1題ずつ出る安定した構成でした。一方で、テーマは政治制度に限らず、社会経済、文化、教育、災害、村落、女性労働まで広がっています。時代配分は予測できますが、題材を絞ることはできません。
対策の中心は、教科書の基本知識、提示文の読解、短い論述の三つです。設問の要求を先に分解し、資料の具体的情報を取り出し、それを教科書の概念と因果関係で結びます。変化を問われたら前後と背景を、関係を問われたら両者をつなぐ述語を、特徴を問われたら比較対象との差を示します。
過去問演習では、模範解答を覚えることより、自分の答案に何が欠けたかを分類してください。東大日本史が求めるのは、教科書を越えた奇抜な知識ではなく、基本知識を未見の資料に適用し、限られた字数で論理的に説明する力です。知識を「思い出せる」段階から、「問いに合わせて選び、資料と結んで書ける」段階へ進めることが、合格点への最短ルートです。
旧帝大対策のまとめはこちらです!↓

