大学入学共通テスト・日本史Bの分析【2021年1月30日実施分】

2021年1月30日に大学入学共通テスト第二日程(1日目)が実施されました。

本記事では大学入学共通テスト(第二日程)の日本史Bを分析しています。

センター試験、第一日程と比較しています。

全体について

●出題内容について
女性史がテーマの問題、意見封事十二箇条を元にした問題、中世の政治・社会・文化について述べた文章からの問題、享保の改革と寛政の改革とにはさまれた時期をテーマとした問題、明治時代における西洋からの制度や技術の導入についての問題、近現代の食文化・食生活をテーマとした問題が出題された。
第一日程と同様、図やグラフ、史料などを利用する問題が目立った。
しかし、第一日程と比較して知識を問う問題が多かった。

●出題形式について
全問マーク式。回答数は第一日程と変わらず32個であった。
史料やグラフ、図表を利用した問題や直接知識を問うような問題もあった。

●難易度について
素直に資料・グラフ・図表を読み解けば知識がなくても解ける問題や問われている知識も基本的なものが多く、頭を悩ませる問題は少なかった。第一日程と比較して少々易化していると予想する。

大問1について

大問1は女性史をテーマとした問題が出題された。第一日程の大問5においても女性をテーマとした問題が出題されている。(配点は18点)

問1のアは文章を読めばわかり、イは史料の年号と普通選挙法の制定年度(1925年)を考えればわかる。

問2はⅠが764年(孝謙天皇)、Ⅱが607年(推古天皇)、Ⅲが658年(斉明天皇)である。

問3は①の関係性が逆である。

問4は与謝野晶子の史料であることと、日露戦争に向かう弟に向けてのものであることを知っていればわかる。

問5は会話文を参考にして考える問題。

問6はaの石棒が男性の象徴であり、dの東京専門学校を作ったのが大隈重信であることを知っていればわかる。

大問2について

大問2は三善清行が提出した「意見封事十二箇条」の序論の一部から出題されている。(配点は16点)

問1は文章を読めばわかる。

問2は各文化の特色と出来事の流れを考えればわかる。

問3は一見文章が長めで読みづらいかもしれないが、問われていることは基本的なことである。

問4の(1)は延喜・天暦の治の時代で起きたことを考える。(2)のYについては延喜の荘園整理令のことを指しているが、これが発令されたのは「意見封事十二箇条」よりも前のことであるので、誤答のように思えるが、醍醐天皇の治世と考えて正答であると判断する。

大問3について

大問3は中世の政治・社会・文化について述べた文章から出題されている。(配点は16点)

問1は基本的な知識を問う問題である。

問2は『吾妻鑑』が鎌倉時代末期に成立した歴史書であることを知っていればわかる。

問3は大輪田泊を整備した人物が平清盛であることを知っていればわかる。

問4は基本的な問題なので落とせない。

問5はⅠが1570年、Ⅱが13世紀の出来事、Ⅲが1459年からの出来事である。

大問4について

大問4は享保の改革と寛政の改革にはさまれた時代に関する問題である。(配点は16点)

問1は②の明和事件が正答である。

問2は武家伝奏は武家の奏請を朝廷に取り次ぐ役割を担っていることを知っているかどうか。

問3は図に遠近法が用いられていることを見抜いて解く問題である。

問4は史料に書いてある主張を読み取る問題である。

問5は史料とホワイトボードの内容を踏まえながら時代背景を考慮して解く問題である。

大問5について

大問5は明治時代における西洋からの制度や技術の導入についての問題である。(配点は12点)

問1はⅠが年表を確認する、Ⅱが1856年、Ⅲが1866年(改税約書)である。

問2は基本知識を問う問題である。

問3は「製糸」と「紡績」の違いについて正確に理解しているかどうかが問われている。
「製糸」が蚕から絹織物の原料となる生糸を作る工程を指し、「紡績」は絹などを長い糸にする工程を指す。生糸が主力輸出品で、安価の綿花をインドなどから輸入していたことが思い浮かぶかどうか。

問4は史料を読めばわかる。

大問6について

大問6は近現代の食文化・食生活についての問題である。(配点は22点)

問1は基本的な知識を問う問題である。

問2は過去に見たことがないような問題ではあるが、冷静に数字をあてはめていけばわかる。

問3はざっくりとした年代の感覚を持っていれば解ける。

問4は松方デフレにより農産物価格は下落したので②が誤りである。

問5は知識ではなく思考力を問う問題である。

問6は戦時下でカレーライスなどの洋食が広まるわけがないのでXは明らかに誤りである。

問7は簡単な問題なので落とせない。

まとめ

文化史はほとんど問われなかった。思考力や考察する力を見る問題が増えていた。

単純に教科書に書いてあることを覚えているだけでは解けない問題も数問あり、来年度以降の受験生は今回の傾向をみて勉強方法を変える必要がある。

とはいえ、多くの受験生は後ろに二次試験や私立入試がひかえているので、そこに向けて勉強していれば難なく対応できるであろう。