大学入学共通テスト・日本史Bの分析【2021年1月16日実施分】

2021年1月16日に大学入学共通テスト(1日目)が実施されました。

本記事では大学入学共通テストの日本史Bを分析しています。

平成30年に実施された試行調査と比較しています。

全体について

○出題内容について
他の試験と同様、資料(史料)や図などを参照しながら解く問題が多いことが最大の特徴である。
試行調査では問題数が36問だったのに対し、今回の共通テストでは32問に減少していた。
発表形式やメモなどの問題もあるが、単純な知識で解く問題も多く散見された。
世界史Bと同様、キャッシュレス社会をテーマに貨幣の歴史についての問題もあった。

○出題形式について
資料(史料)、図、スライド、発表形式、メモなど多様な出題方法であった。
全問マーク式で、センター試験、試行調査同様、記述問題はない。
単純暗記で解ける問題のほか、文章を読めば答えられる問題もあった。

○難易度について
参照するものが多いため、従来のセンター試験よりは回答に時間を要する。
文章を読んだら答えがわかる問題や単純暗記で解ける問題が多く、問題数も減少しているため試行調査よりも易化していると予想する。

大問1について

大問1は「貨幣の歴史」について発表することになった生徒たちが事前学習のために博物館にいき、そこでとったメモが前提の問題となっている。(配点は18点)

2024年に日本銀行券のデザインが変わることに影響を受けた出題であることが問題文からうかがうことができる。

問1はXとYの内容から8世紀前半の法令を知らなくてもa~dの記述のみで回答することができる。

問2は『一遍上人絵伝』をもとにした出題であり、当時の状況と絵やメモからわかることで考えれば容易に回答できる。

問3はセンター試験に似たような出題であり、覚えているか覚えていないかである。

問4は金の成分比率のグラフを丁寧に見ていけば回答できる。

問5は知識問題である。
Ⅰが1884年日本銀行券の発行にともなうもの、Ⅱは1897年日清戦争の賠償金で銀本位制から金本位制に変わったこと、Ⅲは1877年の西南戦争にむけて多額の不換紙幣が発行されたことである。

問6についても正確な知識を要する。
中世では私鋳銭が使用されていたため、bが正答となり、1ドル=360円の単一為替レートが採用されたのは1949年以降のことであるので、もう一つの答えはcである。また、金融緊急措置令の内容もしっかりおさえているかもポイントである。

大問2について

大問2は「日本における文字使用の歴史」がテーマとなっている。(配点は16点)

日本からの観点を中心に日本史を勉強してきた受験生は回答に苦労をしたのではないかと思う。

問1は地図Ⅰが三国時代、地図Ⅱが南北朝時代、地図Ⅲが後漢時代であるとわかるかどうかがカギとなる。

問2は江田船山古墳が熊本、稲荷山古墳が埼玉であることは日本史受験生であれば知っておきたいところ。

問3はbは事例からわかり、dは白村江の戦いが663年なので正答である。

問4は評価とその根拠を答える問題である。
Xは「日本独自の」と書いてあるのでaの儒教や紀伝道は関係ない。Yについてはdに「畳」と書いてあるので中国文化の影響とは考えられない。

問5について、冊封体制の離脱と文字の使用に関係性はない。

大問3について

大問3は中世の都市と地方の関係について文章や史料をもとに出題されている。(配点は16点)
*近年、地方に関連した出題は増えている。

問1は史料と図をもとに回答する問題である。
史料と注、図を参照しながら読めば答えることができる。

問2はセンター試験に似たような問題である。六勝寺が建てられたのは鎌倉ではなく京都である。

問3についても一揆の年号を覚えていれば回答できる。
Ⅰが1485年、Ⅱが1488年、Ⅲは1428年である。

問4についても知識問題である。宗祇は室町時代の連歌師であり、瀬戸焼が陶器である。(赤絵は文様である)

大問4について

大問4は近世社会の儀式や儀礼について図などを用いて回答する問題である。(配点は16点)

問1について、Xは模式図と説明をみればわかる。Yは日米修好通商条約調印のときの大老が井伊直弼であることと、徳川斉昭が水戸藩主であり、水戸徳川家が御三家のうちの一つであることがわかっていれば解ける。

問2は武家諸法度の改定年号やその内容などを覚えていれば解ける。
Ⅰが1853年、Ⅱが1683年、Ⅲが1635年である。

問3はセンター試験に似た問題である。基本的な内容なので落とせない。

問4は史料と注をみれば正答することができる。

大問5について

大問5については女性解放の歴史をテーマとして文章などを読んで答える問題である。(配点は12点)
*ジェンダー論についても昨今の流行のテーマである。

問1、2については知識問題である。

問3について、aは景山英子がむしろ批判したい内容である。また教育勅語の発布は1890年で、義務教育期間延長は1907年である。

問4について、新婦人協会は1919年から発足しているので1907年には協会はない。
新婦人協会が女性の政治集会禁止を打破しようとしていたので、Yは正である。

大問6について

大問6は「第二次世界大戦後の民主化政策」についての発表に際し、スライドを作成することが前提の問題である。(配点は22点)

問1、2については覚えているかどうかである。

問3は空欄アに入るものであるが、農産物価格の低下や小作争議の活発化と書いてあるので「動揺」であり、小作料とは小作人が地主に払う土地の利用料のことなので、農産物価格が下落している中、小作料の引き下げを求める動きが広まるのは必然である。

問4は知識問題である。

問5は空欄イに入るものであるが、総力戦のもとでは食料の調達が重要事項であり、ここで地主を優遇している場合ではないため、政策についてはXが正解であり、目的はもちろんbである。

問6はグラフをみればわかる問題である。

問7は減反政策や農業基本法の内容がわかっていれば解ける。

まとめ

知識が必要な問題や史料などを読めばわかる問題がほとんどである。

基本的な勉強をつみかさねて試行調査で傾向をつかんでいれば難なく解ける問題であった。

今後も同じような出題が続くと思われるため、一問一答的に用語を覚えるだけでなく、歴史学習の基本である時期の確認や目的、結果、詳細な内容まで気を配って勉強する必要がある。