大学入学共通テスト・現代社会の分析【2021年1月16日実施分】
2021年1月16日に大学入学共通テスト(1日目)が実施されました。
本記事では大学入学共通テストの現代社会を分析しています。
平成30年に実施された試行調査と比較しています。
全体について
○出題内容について
知識を直接問われるような問題は少なく、文章や図を参照しながら答える問題が多い。
「MOTTAINAI」で有名になったケニアのワンガリ・マータイ氏を題材にあつかった問題も出題された。また、昨今のSNS上の誹謗中傷を受けてか、SNSが欲求不満のはけ口になっているとして、それに関連した問題も出題された。
○出題形式について
全問マーク式である。試行調査では33問であったが、本試験では30問に変更されていた。
文章を読むことがメインになっているので時間がかかったと思われる。
○難易度について
問題を読めば簡単に答える問題も出題されており、新傾向とはいえ難なく対応した受験生が多いのではないか。したがって難易度は例年並みと予想する。
大問1について
大問1は現代社会の学び方についてまとめたという設定の問題である。(配点は26点)
問1は福沢諭吉と中江兆民の考え方をわかっていれば答えられる。
問2は三権分立の文を見れば明らかに一致していないことがわかる。
問3はカードⅢに書かれている文を読めばAとBどちらも誤りであることがわかる。
問4は現代日本の司法についての基礎知識を問う問題である。
問5は刑事裁判に関わる法制度や裁判手続きについて基本的な知識を問われている。
問6は民事の法制度と紛争解決についての基礎知識を問われている。
問7は現代日本の行政に関する基礎知識を問われている。
問8は2つの政党が掲げる政策が4つの軸の観点からどれに分類されるかを判別する問題。
試行調査にも同様の問題があった。読解力があれば簡単に答えを導き出すことができる。
大問2について
大問2はケニアのワンガリ・マータイ氏を題材にした発表をするという設定の問題である。(配点は16点)
問1は3R(Reduce / Reuse / Recycle)に該当する取り組みを循環型社会形成推進基本法の下で定められている施策の優先順位の高いものから並べていく問題であった。
Reduce(減らす)→Reuse(再使用)→Recycle(リサイクル)の順番である。
問2は投票について実例を用いた問題である。簡単な計算を要する。
問3は政治意思決定に関する基礎知識を問う問題である。
問4はア~ウの語句にあてはまる概念がわかれば簡単である。
問5は正誤問題である。諸国の相違を考慮にいれた制度について。
大問3について
大問3は市場経済と政府の役割についての学習をおこなったという設定の問題である。(配点は27点)
問1は1980年代の経済成長のグラフを選ぶ問題である。
高度経済成長が終わり日本経済が安定期に入り、後半はバブル経済と呼ばれる状態になった。
以上を踏まえたグラフを選ぶ。
問2はGDPに含まれるものを選ぶ問題である。
問3は国際貿易に関して基礎知識を問う問題である。
問4は景気変動とその安定化についての基礎知識を問う問題である。
問5は文章から「非競合性」と「非排除性」の定義を確認して、最適な文章を選ぶ問題である。
問6はア~ウの選択肢が「非競合性」と「非排除性」を持つか持たないかを判別する問題である。
各語の定義を理解していれば解くことができる。
問7は基本的な読解力があれば簡単に答えることができる。
問8は日本の労働に関わる法律に関する基礎知識を問う問題である。
大問4について
大問4は現代社会に出てくるアルファベット略語についてカードゲーム感覚で勉強をするという設定の問題である。(配点は19点)
問1のアは「「革命」や「産業」をつければいいんだよね。」という発言からICT(情報通信技術)を選び、イは「…万能細胞は?」から「「イ」細胞だよね」という発言からIPSを選び、ウは「生命や生きることに絶対的な価値をおき、その維持を最優先する」という記述からSOL(生命の尊厳)を選ぶ。
問2は有名な寓話からの出題である。
防衛本能「合理化」の観点から選択肢を選ぶ。自分の手に届かないものは「価値のないもの」として思いこむという話である。
問3はドナーについての問題。臓器提供できる組み合わせを選ぶ。
問4は日本の法制度についての誤答を選ぶ問題。
問5は青年期の発達について正しい記述を選ぶ問題。
問6は4つの略語の説明のうち適当でないものを選ぶ問題。
WTOは保護貿易は推進しておらず、自由貿易である。
大問5について
大問5は長めの文章や少し細かいグラフや資料などから読み取れることを選ぶ問題である。(配点は12点)
問3については全文を読まなくても下線部を読めば答えがわかる。
最初から順番に解いてきた人は疲労した頭で読み取りを行う必要があるため、取り組むのが億劫に感じるだろうが、ここが勝負の分かれ目である。
まとめ
正文・誤文を選ばせる問題が大幅に減少し(政治経済と同様である)、組み合わせを選ぶ問題が増えている。
しかし、現代社会という教科にもとめられているのは知識をそのまま吐き出すことではなく、理念や制度の内容などを具体的な事柄に応用することができるかどうかである。
定期テスト勉強と同じように現代社会を勉強してきた受験生は歯が立たないのではないか。
本質の理解を重要視し、しっかり現時点で対策できることは対策しきるという姿勢が確実に高得点に結びつく。