大学入学共通テスト・政治経済の分析【2021年1月16日実施分】

2021年1月16日に大学入学共通テスト(1日目)が実施されました。

本記事では大学入学共通テストの政治経済を分析しています。

平成30年に実施された試行調査と比較しています。

全体について

○出題内容について
全体としてセンター試験でみられた知識を問うような問題は大きく減り、他教科と同様、資料やグラフなどが多用されている。
また、裁判所の判例や時事問題なども出題されている。いずれにせよただ覚えているだけでは対応できない問題が多い。

○出題形式について
全問マーク式である。問題数は31問であり、試行調査は30問なので1問増えている。
センター試験で大半を占めていた正誤問題は大きく減り、多様な問題が並んでいる。

○難易度について
知識偏重のセンター試験よりは難易度が上がっているが、平成30年の試行調査と比較すると同等程度の難易度である。

大問1について

大問1は「望ましい社会の姿」というテーマをもとに2人の生徒が発表準備をするという設定である。(配点は24点)

問1は人間開発指数が1990年に開発され、ミレニアム開発目標は2000年に策定されていることを知っているかどうかが問われている。

問2は基本的な計算問題である。
GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP、実質GDPの成長率=(今年の実質GDP-去年の実質GDP)÷去年の実質GDP×100などの公式を用いて計算する。

問3は選択肢から国名を判別することができる。
1は日本、2は中国、3はアメリカ、4は南アフリカである。

問4はグラフを読み取れば答えを出すことができる。

問5は社会保障についての基礎知識である。

問6はウィーン条約がオゾン層保護に関する条約であることを知っているかどうか。

問7はセンター試験と似た正誤問題である。パリ協定では目標達成を義務付けられていない。

大問2について

大問2は民主主義の基本原理と日本国憲法について理解を深めたい生徒たちがある大学のオープンキャンパスで複数の講義に参加したという設定の問題である。(配点は26点である)

問1は資料を読めばわかる問題である。最高裁判所民事判例集が出典のめずらしい問題である。

問2は知っているかどうかが問われている。

問3は資料1から国会の判断に広くゆだねられているかどうかはわからない。

問4は日本の裁判員制度に関する基本知識を問う問題である。

問5は時事問題である。1について罰則規定などはない。

問6はbが明らかに日本国憲法下の日本であり、チャ―ティスと運動が普通選挙を求める請願運動であることを知っていればaがイギリスであることがわかる。

問7は内閣運営に関する基礎知識を問う問題である。

問8は二院制をとる国に関する知識を問う問題である。

大問3について

大問3は雇用、賃金についての話し合いからわかったことから出題されている。(配点は26点)

問1は日本の雇用環境の変化についての基礎知識が問われている。

問2は労働組合についての基本的な正誤問題である。

問3は多少計算が入るが、グラフを読み取れば簡単に答えがわかる。

問4は不良債権処理について詳細に理解していないといけない。難問だといえる。

問5は基本的な正誤問題である。

問6は無償資金援助が第二次所得収支に含まれるということを知っているかどうかがカギとなる。
本問だと、貿易・サービス収支が特許使用料、電気機器の輸入代金、第一次所得収支が株式の配当、国債の利子、第二次所得収支が無償資金援助、家族への送金(仕送り)である。

問7は国際通貨制度に関する基本的な問題である。

問8はフローチャートをしっかり確認すれば簡単な問題である。

大問4について

「日本による発展途上国への開発協力のあり方」についてクラスで発表する準備という設定である。(配点は24点)

問1は民主主義について基本的な理解を問われている。

問2はODAに関する基本的な知識を問われている。

問3は資料の「一人ひとりが幸福と尊厳を以て生存する権利を追求する」という言葉から人間の安全保障という選択肢を選ぶ。

問4はインド、インドネシア、タイ、バングラデシュ、フィリピンが発展してきたことを踏まえれば簡単に判別できる。

問5はアンケート結果を観察すれば正答を選ぶことができる。

問6はマイクロファイナンスやグラミン銀行といったセンター試験では目にしなかった話題から出題された。時事について普段から気にかけているかが問われている。

問7は読解力や文章力の問題である。

まとめ

他の試験と同じように各用語や仕組みの本質的な理解や読解力、考察力が問われている。

教科書に記載されている内容を丸暗記していることは重要ではなく、知識を活用できることがゴールとなっている。

一問一答的に用語を覚えていただけの受験生は歯が立たない内容となっており、時事問題をはじめとして政治経済関連のことについて普段から興味をもって接しているかが得点できるかどうかを決める。