大学入学共通テスト・世界史Bの分析【2021年1月16日実施分】

2021年1月16日に大学入学共通テスト(1日目)が実施されました。

本記事では大学入学共通テストの世界史Bを分析しています。

平成30年に実施された試行調査と比較しています。

全体について

○出題内容について
センター試験と比べて文量が多く、グラフや地図などを参照しながら解く問題や会話の内容を考察したり空欄を埋めたりする問題が目立つようになっている。
ペスト下の状況を題材としたボッカチオの『デカメロン』やジョージ・オーウェルの小説『1984年』を引用した問題など多様な出題があった。

○出題形式について
全問マーク式である。上述したとおり数々の資料や地図、図表などを参照しながら解く問題が多く、単純暗記では太刀打ちできない。文章をよく読めば答えがほぼ書いてある問題もある。

○難易度について
資料などをきちんと読めば回答できる問題が多く、要求されている知識量はそこまで多くない。
しかし、参照するものが多い分、時間がかかるため60分以内に解くことが難しい仕様となっている。
試行調査と難易度の差はほとんどないが、センター試験よりはやや難化していると予想する。

大問1について

大問1はAが『史記』にある始皇帝死亡時の逸話をもとに出題され、Bが歴史家マルロ=ブロックの『歴史のための弁明-歴史家の仕事』をもとに出題されている。(配点は15点)

Aについては始皇帝周辺の人物とその人物が実際にやったこと、そのやったことの内容をおさえていれば回答できる。思想統制に関する問題ついてはセンターらしい出題も見られた。

問3について、司馬遷と同時代の皇帝は武帝であるが、選択肢には彼の施策が2つある。
しかし、商人は蔑視されていたという記述と司馬遷は自由経済を重視していたという内容から物価の統制に結びつけることができれば平準法だとわかる。

Bについては文章から明らかにフランス革命の話だとわかる。
問4は文章をしっかり読めば答えは明確である。問5は2,3が論外なので実質1,4のどちらかであるがフランス革命の内容をおさえていれば回答できる。

大問2について

大問2は世界史上の貨幣についてグラフや会話内容をもとに出題されている。(配点は18点)

Aは1750年から1821年にかけてのイギリスの金貨鋳造量の推移をあらわしたグラフから出題されている。

問1については大雑把にでも年号を覚えていれば容易に回答できる問題である。(正解の2以外は世紀すら違う)

問2についてはグラフから推測をする。

問3については問題文から金貨に描かれている人物がヴィクトリア女王であるとわかればすぐに答えがわかる。

Bは博物館に展示されたアジアの貨幣をみながら2人が会話をしているところから出題されている。

問4についてはセンター試験と同じように年代や時代背景をもとに答える問題である。

問5は全国の貨幣を初めて統一しようとしたのは秦であることから貨幣の種類もおのずとわかる。交鈔は紙であるが資料集などで写真をみたことがあればわかるであろう。

問6はムスタファ=ケマルだけでなく、彼が何をやったのかをおさえている必要がある。

大問3について

大問3は文学者やジャーナリストの作品について述べた文章をもとに出題されている。(配点は24点)

Aは『デカメロン』の一部から出題されている。

『デカメロン』の著者がボッカチオであることは世界史受験者なら当たり前のように知っていなければならない知識である。疫病であるペストを題材にしているため、事前に目をつけていた受験生も多かっただろう。

『デカメロン』は別名「人曲」と呼ばれるため、人文主義思想が基調となっていることは明らか、またイタリア=ルネサンス期の代表作であることもヒントとなる。
ペストの説明については資料を読んだらわかることが多い。

Bは日本人ジャーナリスト大庭柯公が19世紀以降のロシアにおける革命運動の展開について1919年に論評した文章から出題されている。

問5については革命運動といっているのだから、革命家が覚醒を促すにきまっている。
「無併合・無賠償・民族自決」は第一次世界大戦末期にレーニンが提唱した即時停戦提案である。

その他の問題はセンター試験とほとんど変わらなった。

Cはイギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説『1984年』をもとにした討論から出題された。

ジョージ・オーウェルがソ連に対して特別な感情を抱いていることは文章から明らかであるため、問7は1を選ぶことができる。

問8は資料の改ざんをもとにした問題であり、新傾向である。
18世紀という年代から明らかに四庫全書であり、衣裳についての記述が改ざんされていることから2を選ぶことができる。

大問4について

大問4は国家や官僚が残してきた文書をもとに出題されている。(配点は26点)

Aは19世紀にヨーロッパで締結された条約の内容の一部から出題されている。

Aの資料がベルリン条約であることは容易にわかるが、内容までしっかり理解をしているのかが問われる。

空欄アに入る国がブルガリアとわかったうえで、さらにブルガリアの地図上の位置まで把握しているかがカギとなっている。

問3の「あ」については、イタリアではなくオーストリアであることを知っていれば簡単に答えがわかる。

Bについては2人の会話から出題されている。

年号や時期などを把握していれば解ける問題である。

Cについては英領インドに関連する文書をもとに授業を行ったという前提から出題されている。

問7については作品名だけでなく『シャクンタラー』がサンスクリット語、『ルバイヤート』がアラビア語の文学であることを知っているかが問われている。(『ルバイヤート』がアラビア語で書かれているという知識だけでも解ける)

また、資料を正確に読む必要がある。

大問5について

大問5は旅と歴史について述べた文章から出題されている。(配点は17点)

Aはヨーロッパ旅行したあとに旅行記を書いてみたという前提から出題されている。

地域1、地域2、地域3がそれぞれどこを指しているかについては瞬時に判断できなければならない。
地域1はシチリア島、地域2はロンドン、地域3はアテネである。

問2についてはイギリスと約100年間も戦争していたのはフランスである。

Bは韓国を訪れた佐藤さんが問題文にある写真の石碑の前で観光ガイドに質問しているという前提から出題されている。

問4の人物については、韓国について話をしているので西太后であるはずがない。
エに入る文は本文をしっかり読んでいれば簡単にわかる。

問5については、韓国は朱子学を重視してきたため、陽明学をうちたてた王守仁(王陽明)から批判される。

問6は年号を正確に覚えておけば簡単にわかる。

まとめ

地図の問題が少なくなったり、複数正解の問題や連動式の問題がでなかったなど、試行調査とは違う形式の部分があったがおおむね難易度は変わらない。

全体として知識が必要な問題は多くなく、資料や図をしっかり読めば回答できる問題もあった。

共通テスト全体の傾向として知識偏重型から読解力・思考力重視の試験に変わっている。

傾向がかわったり、予想していなかった問題が出ても臨機応変に対応できるように基礎力を固めていたかが、今回の試験で点を取れているか否かをわけていると考える。

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