大学入学共通テスト・国語の分析【2021年1月16日実施分】

2021年1月16日に大学入学共通テスト(1日目)が実施されました。

本記事では大学入学共通テストの国語を分析しています。

平成30年に実施された試行調査と比較しています。

全体について

○出題内容について
試行調査の段階では記述式の導入が検討されていた。試行調査後、国語の記述式導入が延期となったため今回はすべてマーク式の試験となった。したがって、受験生全員、全問マーク式の共通テストを受けるのが今回初めてとなる。
現代文についてはセンター試験と同じような問題が出題される一方、新傾向もみられた。
古文はほとんどセンター試験と変わらない。問題文中の和歌について理解しているかどうかの問題が出題された。
漢文はあるテーマに沿った文が出題され、重要な語について理解しているかどうかを確認する問題が出ている。

○出題形式について
現代文については文章の内容をまとめたノートを作成し、ノートにある空欄に入るものを選択肢から選ぶ問題が出題された。
古文は基本的にセンターと変わらないが、和歌について別途文章があり、考察を進めていく問題が出題された。
漢文はあるテーマに沿った文章が2つあり、これらを関連づけながら考える問題が出題された。

○難易度について
センター試験、試行調査と比較しても難易度に大きな差はなく、初見であっても取り組みやすい問題が多かった。覚えてさえいれば解けるという問題はほとんどないので普段から国語力を鍛えていた受験生のほうが有利である。他教科と同様に冷静に整理することができるかが明暗をわける。総合的にみて難易度は標準であるといえる。

大問1について

大問1は香川雅信『江戸の妖怪革命』(問5は芥川龍之介『歯車』)から出題された。(配点は50点)

妖怪に対する意識変容を考察する文章である。
問1から問4まではセンター試験と変わらない方式であるため、例年通り解いていれば問題ない。

問5から授業ノートを作成し、まとめる問題が出題された。
傍線部の理解だけでなく、文章全体を要約し、抽象化することができるかを試されている。

芥川龍之介の『歯車』の一部文章と関連付けて出題されているが、もともとの文章の内容を理解していれば難なく解くことができる。

新傾向対応分を含めて考えると例年よりは低い点数になると予想する。

大問2について

大問2は加能作次郎『羽織と時計』(1918年発表)(問6は宮島新三郎『師走文壇の一瞥』)から出題された。(配点は50点)

1918年発表の文章ということで内容は古く感じるかもしれないが、設問自体は奇抜なものはなく、センター試験と大きく変わるところはない。

問6は批評文をもとに多角的な考察をする問題であるが、大問1と同じように小説の内容を理解していれば解くことができる。

全体的に選択肢を選ぶときに迷うものは少なく、難易度自体は例年並みであるが、新傾向に対応できていない受験生分を含めて考えると、点数は例年より少し低いと予想する。

大問3について

大問3は『栄花物語』の一節から出題されている。『栄花物語』は作者不詳の平安時代の歴史物語である。(配点は50点)

文章の長さはセンター試験と比べて短いが、敬語が多用されており、主語が誰なのかわかりにくく、5首分の和歌の考察も含まれている。

『千載和歌集』に収録されている和歌と比較して考察を深めていく新傾向の問題が出題されている。

直接的に知識を問う問題は少なく、文法や単語は理解したうえで読解の練習をしてきたかが明暗をわける。

試行調査には生徒と教師の会話をもとに問題が出題されたが、今回の共通テストでは出題されなかった。

冒頭に書かれている背景をもとに藤原長家をはじめとした人々の心情をとらえることが重要であった。

新傾向の問題があったとはいえ、内容に奇抜な点はなく、総合的にみて標準レベルであると考える。

大問4について

大問4は欧陽脩『欧陽文忠公集』(問題文Ⅰ)、『韓非子』(問題文Ⅱ)の文章をもとに馬車を操縦する「御術」をテーマにしている問題である。(配点は50点)

センター試験と変わらない問題もあったが、全体的には試行調査と同じように文の内容を理解して考察を進めることができるかが問われている。

逆にいえば、内容を理解していれば知識がなくても回答できる問題も多くあったということである。

古文と同じように全体的に標準レベルであると考える。

まとめ

記述式がない分、試行調査とは差異があったものの、難易度についてはセンター試験と大きな違いはない。

数々の資料と本文をいったりきたりしながら臨機応変に対応しなければならない点は他教科の試験と同じである。

共通テストの英語と同じように知識を吐き出せば得点できるという種類のテストではないため、はやめに対策をはじめた人が有利な展開となっている。

今後もこのような知識偏重ではなく、考察や思考、資料の参照を必要とする問題は続くと思われるので来年の受験生はこの点を意識してもらいたい。