大学入学共通テスト・英語(筆記)の分析【2021年1月16日実施分】
2021年1月16日に大学入学共通テスト(1日目)が実施されました。
本記事では大学入学共通テストの英語(筆記)を分析しています。
平成30年に実施された試行調査と比較しています。
全体について
○出題内容について
試行調査と同じようにメールや広告、ウェブサイトなど日常で目にするような題材が出題された他、参考資料つき文章、論説文に至るまで多様な問題が出題された。
○出題形式について
従来のセンター試験と変わらずマーク式であるが、状況に応じて並べ替えをする問題や1問で複数回答をしなければならない問題があった。試行調査と同じく問題文はすべて英語であった。
○難易度について
形式自体は平成30年に実施された試行調査と同じであるが、図や資料の量が試行調査と比べてかなり増加しており、それだけ読み取りや判断に時間がかかったと予測する。なかには選択肢は5つだが、答えは4つ選ぶというミスをさそうような問題もあった。したがって、平成30年実施の試行調査よりやや難化していると考える。
大問1について
大問1はテキストメッセージのやり取り、あるミュージシャンのファンクラブ向けウェブサイトからの出題であった。(配点は10点)
どちらもベーシックな単語のみが使用されており、回答に困ることはないだろう。
テキストメッセージのやり取りについては平成30年の試行調査にはなかった最後の1文から次の返答を予測する問題であった。
ウェブサイトについても平易な文で書かれており、案内をもとに正答を判断させる問題だが、とくにミスをするような箇所はないため、ここで点を落とすのは痛手である。
a weekをseven days、a 50% discountをat half priceと言い換えていたりなど、多少の工夫はあったが、特に迷うものではない。
大問2について
Aは表とコメントの読み取り、Bは意見交換文の読み取りであった。(配点は20点)
平成30年の試行調査でも出題されたとおり、fact(事実)とopinion(意見)を判断させる問題があった。
*factとopinion問題についてはこちらで詳しく説明しています。
Aについては3人のコメントがあり、ある人特有の意見なのか全員が一致した意見なのかを判断する必要がある、落ち着いてそれぞれのコメントをみれば明確に示されているので、迷うことはない。
Bについてはfactのみを問う問題があった。
問4についてはreport(報告書)といった公的な文書をもとにした記述があり、ここが明らかにfactにあたる部分である。
2人のやり取りをふまえて、動きを予測させる問題も出題されている。
大問3について
大問3は「ホテルの口コミ」についてのウェブサイト、「国際交流会館改築への寄付依頼」についての掲示からの出題であった。(配点は15点)
試行調査と異なり、多少の計算を要する問題が出題された。
数字をあつかう問題は表現に気を付けなければいけない。
本問だと、”Now it takes three times as long as usual to get to the hotel by city bus, although buses run every ten minutes.”という部分である。
(前の文を受けて)今では市バスでホテルに向かうといつもより3倍の時間がかかるといっているので、この「3倍」も考慮にいれなければならない。また、時期もチェックし忘れないことも重要であった。
「国際交流会館改築の寄付依頼」についての掲示は、時系列に沿ってイベントを並べる問題が出た。試行調査のように感情の流れを並べる問題はでていない。
大問1のように次の動きを予測させる問題も出ている。
細かい点であるが、掲示を作成した交換留学生がイギリス出身ということでcentreなどイギリス英語が用いられている。(アメリカ英語はcenter)
大問4について
Eメールと図表「生徒と英語ネイティブ教員とのEメール」からの出題であった。(配点は16点)
試行調査と比べて図表の数が多いため、ここで面食らってしまった受験生が多いと思われる。
Eメールは2通あるが、問題1、3については2つのメールを行ったり来たりしないと正答を選ぶことができない。
時刻を決定する問題は明確に時刻が記載されているわけではないので、図や文章から推測をして回答する必要がある。
問5は科学について述べていることから、科学と関連しているHibari Space Centerを選ぶ。
書いてあることを頭の中で違う言葉に言いかえたり、図表やメールをいちいち参照する必要があるので、大問4の正答率は低くなると予想する。
大問5について
物語「雄牛のアストン」からの出題であった。(配点は15点)
集中力がきれてきたところで長めの文章を読み、問題文もしっかり読みこんでいく必要がある。
プレゼンテーション用のスライドに入る言葉を選んでいく問題が主である。
Main figure(主要人物)やMinor figure(脇役)、Pre-fame Storylineなどの見慣れない言葉が出てくるが、落ち着いて選択肢などから推測すれば問題ない。
問3についてはダミーの選択肢が含まれており、ダミーを見分けるにはPre-fame Storylineが何を指しているのかを明確にしなければならない。(Pre-fameは「有名になる以前」という意味)
試行調査では、「選択肢を1つ以上選べ」というタイプの問題が出たが、本試験では出なかった。
大問6について
大問6は説明文「アイスホッケーの安全性向上」(A)、説明文「多様化する甘味料」(B)からの出題であった。(配点は24点)
文章自体は長いが、平易である。
Aについてはポスターの空所を埋める問題であったが、文章の流れで埋めていけばいいので難易度は低い。
Bについては甘味料について専門的な語が出てくるが、語自体は重要ではなく、数的な表現を適切に処理できるかや内容一致などのオーソドックスな問題を短時間で処理できるかがカギとなる。
まとめ
試行調査通り、アクセントや文法問題は出題されず、すべて長文読解で占められていた。
文法問題がないことについては「文法をやらなくてもいい」ということではなく、「基本的な文法は知っていて、それを用いた文章は読めて当然」ということを指している。
また、単語力も重要であり、いかに無意識化されている単語があるかが制限時間内に読んで答えられるかどうかを左右する。
長文を読み、資料や図表から適切に読み取る練習を怠った人は今回の共通テストは非常に難しく感じただろう。