日本史と世界史が苦手な人への改善策

本記事では日本史と世界史のテストで点数が取れない、受験で使うのにどうにも成績が上がらない人に向けた改善策が記載されています。

前提段階、苦手になってしまう理由、実際の問題のタイプを通じてわかる改善策を書いています。

特に国公立文系、私立文系で日本史、世界史を使用する人は必見です。

前提段階

そもそもの問題として教科書や参考書を説明なしでは読むことができない、読んでも何を言っているのかわからない人がいます。

日本史、世界史の教科書の実際の記述を見てみましょう。
・日本史
天皇は、醍醐・村上天皇の新政を理想とし、摂政・関白をおかず、幕府も院政も否定した。また、すべての土地所有権の確認には天皇の綸旨を必要とするという趣旨の法令を打ち出して、天皇への権限集中をはかった。しかし、現実には天皇の力だけではおさめきれず、中央には記録所や幕府の引付を受け継いだ雑訴決断所などを設置し、諸国には国司と守護を併置した。また東北・関東地方には、それぞれ陸奥将軍府・鎌倉将軍府をおいて皇子を派遣したが、それらの実体はむしろ鎌倉将軍府とも言えるような旧幕府系の武士を重用したものであった。(『詳説日本史探究』111ページより引用)

・世界史
アメリカ合衆国が統治するフィリピンでは、1907年に議会が開設され、立法や行政においてはフィリピン人への権限委譲が認められた。しかし、経済面では合衆国への輸出に大きく依存した商品作物生産が進んだため、窮乏化した農民たちは反乱を繰り返した。その結果、34年にフィリピン独立法が成立し、翌年独立準備政府が発足した。(『詳説世界史探究』297ページより引用)

日本史の場合、摂政・関白、院政、土地所有権、綸旨、法令、権限集中、記録所、引付、雑訴決断所、諸国、国司、守護、併置、陸奥将軍府・鎌倉将軍府、皇子、旧幕府系の武士、重用など
世界史の場合、議会、立法、行政、権限委譲、商品作物生産、窮乏化、独立準備政府、発足など
こういった用語、言葉が何を指しているのか分からなかったり、文章中でなにを意味しているのか分からない人は教科書や参考書を読むだけでストレスです。
土地名についても日本史は東北・関東地方、世界史はアメリカ合衆国、フィリピンがどこを指しているか分からない人も意味不明ですよね。

この準備段階で引っかかってしまう人は教科書をもとに戻って読んだりして用語を理解してから前に進んでください。場合によっては勉強をやめて国語の勉強を早急に始める必要がある人もいると思います。

苦手になってしまう理由

苦手になってしまう理由は上記のこと以外にもいくつかあります。

1. 用語を意味もわからず単純暗記している
準備段階と重なるところがありますが、教科書や参考書に書いてある歴史用語の意味や内容を理解しないまま読んでいるタイプです。
上記の例なら日本史で言うと記録所、引付、雑訴決断所、国司、守護、陸奥将軍府・鎌倉将軍府など、世界史で言うと商品作物生産、フィリピン独立法、独立準備政府などです。
文字だけ頭の中で浮いている状態なのでいつまでたってもなかなか覚えることができません。

2. 流れをつかんでいない
歴史には話の流れがあります。
歴史的な出来事がそもそもなぜ起きているのか、因果関係は何なのかがわかっていないので、歴史的出来事Aと歴史的出来事Bが頭でつながりません。
問題は当然、教科書や参考書と異なる形式で書かれていますので、ここをつかんでいないと苦戦します。

3. どこで起きているのかがわからない
特に世界史で顕著なのですが、歴史的な出来事がどこで起きているのかをつかんでいないパターンです。
現在と地名や区画が違う場所、聞いたこともない場所などが引っかかるポイントです。
日本史でも自分が住んでいる地域以外の場所に興味がない、大雑把にでも47都道府県、古代の行政区画の名前と場所が言えないなどの場合、土地の把握に苦戦します。

4. 数字を覚えられない
年号や金額などの数字に無頓着のパターンがあります。
年号を覚えておけば文章を把握するよりも簡単に歴史的な出来事の流れを頭に入れることができます。
特に世界史では各国の流れを同時並行でつかんでいく必要があるので年号を覚えていることは武器になります。
徴税や賠償金など年号以外にも数字が関わることがあります。

5. 教科書、参考書を読むのが遅いし復習もしていない
通史の学習に時間がかかる上に復習もしていないとなると先のことは忘れていき、結局ほとんど0の状態からやり直すということを繰り返すことになります。
2周目、3周目となるごとにスピードアップしていきましょう。

6. 勉強が作業になっている
他の教科と同じですが、ノートまとめが作業になってしまい、キレイにノート作成はするけど復習で使わないし、時間がかかってしまうという場合は効果は薄いです。

7. インプット過多の学習になっている
暗記過多の学習になっていると上記の流れがつかめない、用語の意味がわからないということになりがちです。
気づいたら一問一答や問題集しかやっていないということはありませんか?
教科書や参考書に立ち戻って流れをおさえないと点数は上がりにくいです。

8. 聞いたことある程度の知識が多い
勉強したことはあるけど、それが一体何なのかを思い出すことができないパターンです。
どこまで勉強してもこういった知識が出てくるのは仕方のないことですが、これが多すぎると当然答えることができません。

9. 現代まで間に合っていない
歴史は先史、古代、中世、近代、現代に大雑把に分かれていますが、現代まで学習が間に合っていないパターンもあります。特に難関大学は現代までしっかり出題してきますので特に現役生は要注意です。

10. 知識が整理されていない
例えば日本史だと令義解の作者、内容、令集解の作者、内容は整理されていますか?
このように整理しないとごちゃごちゃになってしまう知識にも要注意です。
特に似たようなものは整理しないと正確に覚えることができませんし、大学側も何が整理されていない傾向にあるのか把握しているため引っかかってしまいます。

改善策

点数が上がらないということは当然、問題に答えられないということです。
国公立、私立で問題の種類が異なりますので、それぞれの問題を通じてどうやって勉強していけばいいのか改善策を示します。

・国公立、難関私立大学の論述タイプ
国公立大学、難関私立大学では語句の一問一答のほか、論述問題を出す大学が多いです。
実際の問題を見て対策をしていきましょう。

・日本史
波線部に関連して、朝鮮がこれらの外交文書を受け取らなかったのはなぜか。100字以内で説明しなさい。その際、以下の語句を必ず使用し、用いた箇所すべてに下線を引きなさい。(2018年度 東京外国語大学)
*外交文書とは維新の通知と廃藩の告文のこと

朝貢 天皇 勅

・下線部(f)にかかわる次の文章を読んで、大日本帝国憲法下において、「天皇家と一般国民について、二元的な身分登録制度になっている」ことの理由について75字程度で述べなさい。(2021年度 上智大学)
*文章は割愛します。

・世界史
この時期のアジア・アフリカ諸国の協調、結集の意義について、以下の語句をすべて用いて200字以内で述べなさい。なお、語句を用いる順序は問わないが、最初に用いた箇所に下線を付すこと。(2021年度 千葉大学)

反植民地主義 第三勢力 東西対立



日本史、世界史ともに指定語句を用いた論述問題です。難関国公立、私立で出題される傾向にあります。
どちらの問題にも共通していることは「語句の意味」、「因果関係」をつかんだり、「なぜ?、どうして?」などの疑問を持ちながら教科書や参考書を読んでいかないと論述の糸口がつかめないということです。

こういった問題に対応する必要がある人は「白紙還元」をしてみましょう。
白紙還元とは自分が覚えた歴史的な流れを何も見ずにアウトプットできるか確かめるということです。
白紙還元をした後に歴史的な出来事の関係性を考えてみましょう。
例えば今回の日本史の問題は日本と朝鮮、清国と朝鮮の関係性を想起できないと書きづらい問題です。
世界史についても「こんなことがありました」までしか覚えていないと書くことができません。

・私立大学の単問タイプ
私立大学では様々なタイプの問題を出題しますが、いくつかのパターンに分けることができます。

1. 一問一答問題
下線部(3)の古河財閥の発展の中核となっていたのは、創業者の古河市兵衛が1877年に摂取した銅山の経営であった。この銅山の名前を答えなさい。(2023年度 学習院大学)

このタイプの問題は教科書、参考書を通じて流れを確認しつつ、一問一答で名称と内容をつかめば答えることができます。ここで用語しか覚えていない人は答えることができません。選択式の問題もあります。

2. 文章の正誤を確認する問題
これに関する記述として正しいのはどれか。次のa~dから1つ選び、その記号をマークせよ。(2020年度 立教大学)*「これ」は「下関条約」です。
a. 新たに沙市・重慶・蘇州・廈門を開港することが定められた
b. これで得た賠償金の大半は新たに獲得された台湾の産業開発に当てられた
c. これに基づき日清通商航海条約が締結された
d. 清国は朝鮮半島の日本領有を認めた


下関条約の内容と結ばれた結果どうなったのかを把握していないと回答できない問題です。
これもまた下関条約が結ばれたことだけしか覚えていないと回答することができません。

中世のローマ=カトリック教会とキリスト教文化について述べた①と②の正誤の組合せとして、正しいものはどれか。(2023年度 早稲田大学)
①教皇ウルバヌス2世は、イェルサレム奪回のための十字軍とともに、アルビジョワ十字軍を提唱した。
②12世紀ルネサンスによってもたらされたアリストテレス哲学の影響下に、スコラ学が発展した。
*選択肢は割愛します。


上記の2文の正誤を確認する問題です。
やはりそれぞれ出来事の因果関係を把握していないと回答することができません。

3. 空所補充問題
下線部(4)に関連して、以下の文章の空欄①〜③に入る語句をa~fのうちから一つ選び、その記号を解答欄にマークせよ。(2020年度 法政大学)
イギリス商人によってタバコがもたらされた①帝国では、アフメト1世やムラト4世などが喫煙を禁止した。②帝国では、アクバル帝の後を継いだ第4代皇帝シャハーンギールが喫煙を禁止した。また、ムラト4世治世下の①帝国からイラク南部を奪還した③朝のアッバース1世も喫煙を禁止した。
*語群は割愛します。


空所の前後をヒントにして回答する問題です。
それぞれの用語が何に結びついているのかを把握していないと回答することができません。

4. 時系列に並べ替える問題、一定期間の出来事を選ぶ問題
下線部チの期間に起きた事柄a~cを古い順に並べたうち、正しいものはどれか。(2021年度 早稲田大学)
a. 半済令がはじめて発布された。
b. 北畠親房が『神皇正統記』を著した。
c. 今川貞世(了俊)が太宰府を制圧した
*選択肢は割愛します。

下線部(オ)のように外国の支配に抵抗した例は他にもあり、ベトナム民主共和国の独立を宣言した人物もその一人である。この人物のベトナム民主共和国大統領在任中の出来事を次の(a)から(d)より過不足なく選んだものを[01]より[15]選び、その番号を(69)(70)にマークしなさい。(2022年度 慶應義塾大学)
(a)中越戦争 (b)ディエンビエンフーの戦い (c)トンキン湾事件 (d)ベトナム民主共和国の終焉
*選択肢は割愛します。


上記のような期間に着目した問題も頻出です。
年号を覚えていれば即答できますが、難関大学ほど年号暗記だけでは対応できない問題を出してきますので、このタイプの問題も流れと因果関係の把握が必要です。
また、難しい問題は政治的な出来事、経済的な出来事、文化的な出来事などを混合した問題も出しますし、世界史の場合は地域が違ったり、同時代同時多発的に起きた出来事の並べ替えも出題される傾向にあります。

5. 資料(史料)を活用した問題
世界史なら地図、絵画など、日本史なら地図、絵画、文書などの資料(史料)を活用した問題が出題されます。
教科書、参考書、資料集に記載のあるものは必ず頭に入れてください。
特に日本史は史料を見たら何に書かれているか、どんな内容なのかはおさえておいてください。

6. 用語の記述説明問題
下線部(E)について、こうした目的のために、イスラーム世界にはワクフと呼ばれる制度があった。この制度について80字以内で説明せよ。ただし、句読点は1字とせよ。(2023年度 成城大学)

ある用語について説明する問題が出題されます。
これもまた用語の単純暗記では対応することができないので、「どういう内容?」という点を忘れずに覚えていってください。

7. 組合せ問題
下線部bに関連して、律令時代の国名X・Yと、その行政区画a~dの組合わせとして正しいものを、下の①〜④から選びなさい。(2022年度 青山学院大学)
X 伯耆国 Y上野国
a 山陰道 b 山陽道 c 東山道 d 東海道
*選択肢は割愛します。


このタイプの問題は流れというよりは情報を正しく整理する必要があります。
何らかの組み合わせが存在する知識はノートなどにまとめて整理しておきましょう。

以上のように私立大学系の問題についても論述問題ほどじゃないにせよ、流れと因果関係、用語の意味と背景をおさえないと満足に回答できない構成になっています。
やはりわかりやすくて楽だからか一問一答的な問題集だけをひたすら繰り返す人がいますが、教科書や参考書を使った歴史的な出来事の理解も不可欠です。用語のみの暗記は最低限やるべきことで、それで点に結びつくことはありません。
一問一答をやらない方がいいとは言いませんが、そればかりになるのはやめましょう。

「教科書や参考書を繰り返せばいい」「一問一答をひたすら繰り返せばいい」などの勉強方法だけが一人歩きして、どんな問題が出て、どんな覚え方をしていないと点数にならないのかまで具体的に説明できる人は少ないと思います。
流れの把握や因果関係の把握、用語の内容の把握は「やったほうがいいこと」ではなく、「やらなくてはいけないこと」だということを強く意識してほしいと思います。

冒頭にあげた2つの文章をもう一度見てみましょう。
・日本史
天皇は、醍醐・村上天皇の新政を理想とし、摂政・関白をおかず、幕府も院政も否定した。また、すべての土地所有権の確認には天皇の綸旨を必要とするという趣旨の法令を打ち出して、天皇への権限集中をはかった。しかし、現実には天皇の力だけではおさめきれず、中央には記録所や幕府の引付を受け継いだ雑訴決断所などを設置し、諸国には国司と守護を併置した。また東北・関東地方には、それぞれ陸奥将軍府・鎌倉将軍府をおいて皇子を派遣したが、それらの実体はむしろ鎌倉将軍府とも言えるような旧幕府系の武士を重用したものであった。(『詳説日本史探究』111ページより引用)

・醍醐天皇・村上天皇はどういう人?
・親政って何?
・なんで摂政と関白を置かなかったの?
・幕府も院政も否定した理由は?
・何で土地所有権の確認をするのに天皇の綸旨を必要とすることになったの?
・綸旨って何?
・なぜ天皇に権限集中する必要があるの?
・記録所、引付、雑訴決断所って何?
・国司と守護って何?
・何で地方に将軍府を置いたの?何で皇子が派遣されたの?
・何で実体と異なることになったの?

・世界史
アメリカ合衆国が統治するフィリピンでは、1907年に議会が開設され、立法や行政においてはフィリピン人への権限委譲が認められた。しかし、経済面では合衆国への輸出に大きく依存した商品作物生産が進んだため、窮乏化した農民たちは反乱を繰り返した。その結果、34年にフィリピン独立法が成立し、翌年独立準備政府が発足した。(『詳説世界史探究』297ページより引用)

・何でアメリカ合衆国がフィリピンを統治しているの?
・1907年は他の国では何が起きてた?世界的に何が起きてた?
・何で立法と行政はフィリピン人へ権限委譲されたの?
・何で商品作物生産は合衆国への輸出に依存していたの?
・商品作物生産って何?
・何で窮乏化するの?
・フィリピン独立法と独立準備政府が発足したらどうなった?

など、ただの文章の後ろに隠れている疑問はたくさんあり、こういったところが問題で問われます。
単純にこの文章を丸暗記しても解ける問題は限られてしまいます。
社会科目は特に効果が薄くても勉強している気分になりやすい科目なので受験科目としている人は面倒くさくても以上のことを意識する必要があります。


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